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2021/08/06

第14話

第2章【芸能界】#06
#06[高鳴る鼓動]


「げっ……千さん…。」


大人気アイドル【Re:vale】の千さん、3年前くらいに友人を通して知り合い仲良くなった。


まだRe:valeが今程の人気がなかった頃、私のチャンネルでラジオ撮ったり百さんとはたまに一緒にゲームしたりしてたけど今じゃお互い忙しくなって最近は特にタイミングが合わず食事にすら行けてない。


「ちょっと、久しぶりに会う友人に対する反応じゃないでしょ。ていうか何でここにいるの。」


「ちょっと事情がね。百さんは?」


「いろんなとこに挨拶回り行ってるよ。たぶんもうすぐ帰ってくるから僕も楽屋戻るけど一緒に来る?」


久しぶりに会いたいところだけどIDOLiSH7の楽屋を出て結構時間が経ってしまっているし、大人気アイドルの楽屋なんていろんなアーティストが集まってきそうだからやめておこう。


TRIGGERも来るかもしれないし、ね。


「忙しいでしょうし遠慮しとく。それに私は今日仕事で来てるから。」


「仕事?僕らの番組に誘っても全然出てくれないくせに一体どんな番組に出るの、まさかメジャーデビュー?」


絶対こう言われるとわかっていたから出来れば会いたくなかったんだけどな…。


Re:valeの冠番組に何度か誘われたがTVであまり目立つことはしたくないので毎回断っていた。


それに男性アイドルが女性アーティストと仲良くしてるのはファンからしたらあまりよろしくないだろうし。


プライベートで仲良くさせてもらってる分変な噂が広まると迷惑をかけてしまうから。


「違う違う、知り合いのちょっとしたお手伝いだよ。」


「へぇ、まさかこの業界に僕ら以外の知り合いがいるとはね。だから最近構ってくれないんだ。」


「そんな事言ってそっちも忙しいくせに。じゃあ私もう行くから、百さんによろしく言っといて!」


「百も君に会いたがってるよ、たまには顔見せてあげて。」


「うん、またね。」


千さんに手を振り来た道を戻る。


来る途中自販機があったはずだから陸に暖かい飲み物を買って帰らなければ。


────


飲み物を買い楽屋に向かって歩いていると、目線の先に高そうな白いスーツを着た険しい顔の男性に紡ちゃんが絡まれているのを見つけた。


助けに行こうと走り出そうとしたその時


「何やってんだ!!こんな所で女と揉めるんじゃねぇ!!」


「っ。」


紡ちゃんに絡んでいた男性を振り払う青年。


アイスグレーの髪と鋭い瞳。


思わず曲がり角の隅に隠れ、息を潜める。


次第に鼓動が早くなり、冷や汗をかいた。


聞こえてしまうのではないかと思うくらいに高鳴る胸を抑え、その場をやり過ごす。


なんとか心を落ち着かせつつ、物陰からそっと覗き込むと男性はその場からいなくなっていて紡ちゃんと青年の2人が立っていた。


この距離じゃ流石に会話は聞こえないか。


しばらく見守っているとなにやら慌てている様子の紡ちゃんを見て青年が微笑む。


あ…。


ほんの少しだけチクリと痛む胸を抑え、青年が立ち去るのを確認して紡ちゃんの元へと向かう。


平常心、平常心…


「紡ちゃん。」


「あなたさん!ここにいらしたんですね!」


「陸のお茶を買いにね、紡ちゃんも1人?他の子たちは?」


「恥ずかしながら人混みに流されてしまいまして…今皆さんの所に戻るところです。」


「それは大変だったね、じゃあ一緒に戻ろうか…。」


「小鳥遊さーーん!!」


番組の関係者だろうか、血相を変えて走ってくる。


話を聞くと他のアーティストの到着が遅れているらしく急遽IDOLiSH7の出番が早まったらしい。


「急いで皆さんに知らせないと!!」


「私は陸の所に行くから、紡ちゃんは他の子たちの所へ!」


二手に別れて走り出す。


幸い楽屋は近くだった為直ぐに着いた。


緊急のためノックはせずに勢いよく扉を開ける。


「陸!スケジュールの関係で急遽変更になった!あと15分で出番よ!」


「はぁ…はぁ…。」


楽屋に1人残っていた陸は顔をしかめ肩で息をしていた。


「陸…貴方まさか…。」


発作を起こしかけてる…!?


「大丈夫…平気だから…。」


「でも陸、発作が。」


「大丈夫!行ってきます!」


そう言うとそのまま楽屋を出て行ってしまった。


「陸!……もう、あの馬鹿!!」


走り去った陸の後を追いかけた。


────


スケジュールの変更があったかと思えば今度は待機場所が変更になりまた更に変更を重ね現場は混乱していた。


なんとか無事に待機場所に辿り着けたが落ち着く間もなくIDOLiSH7の出番がやってくる。


陸の状態を不安に思いながらも私には特に出来ることはなく、そのまま紡ちゃんと一緒に皆を見送る。


その後はただただステージを見るのが辛かった。


一織くんが陸の状態に気づいたようだったけれどその事に集中してしまったせいか、自分のパートを歌い忘れたのだ。


それからというもの、皆は混乱しているのか笑顔はなく、歌もダンスもバラバラ、アーティストとして最悪なパフォーマンスをお客さんの前でやってしまった。


そのまま出番が終わり、ステージからはけてこちらに戻ってくる。


この場は完全にお通夜状態だ。


誰も言葉を発さないままでいると聴き覚えのある曲が流れ出し客席から凄い歓声が聞こえてきた。


出入口からTRIGGERの3人が入ってくる。


私は急いで大和くんの後ろに隠れた。


彼らは特にこちらに声をかけてくることもなく、真っ直ぐステージに向かって行った。


そして先程の自分たちとは比べ物にならないくらい圧倒的で完璧なパフォーマンスを見せつけられる。


その間1人隅の方にいた一織くんが気づいた頃にはいなくなってしまっていた。


────