第2話

見知らぬ廃墟に袈裟男
289
2021/05/02 16:15
目を覚ますとそこは、見知らぬ廃墟だった。
あなた
···えっと、何処?
少女は困惑した。
それも無理は無い。
いきなり、自身が拉致されたのだ。
しかし、少女の困惑はそこだけでは無い。
その廃墟が、
ちゃんとした鉄コンだったからだ。
少女の住む孤児院の付近には、
廃墟はあっても、その殆どが木造建築なのである。
つまり、全く知らない場所に連れてこられたのだ。
これは困る。明日は三者面談なのだ。
面倒だが、学校に行かねば
後日、もっと面倒なことになる。
あなた
ん〜、どの辺かな?
F県くらいならまぁいいけど···
海峡越えてたら困るな。
そんな事を考えていると、袈裟を着た男が現れた。
夏油傑
君は拐われたというのに、
随分と冷静なんだね。
少女は顔を上げ、笑顔で答える。
あなた
顔に出ないだけですよ。
正直、困ってますし、怖いです。
その様子に男は呆れて言った。
夏油傑
そうは見えないけどね。
君があなたの名字あなたの下の名前ちゃんで、
合ってるかな?
あなた
もし違ったら?
夏油傑
帰って良いよ。
あなた
それは残念、帰れない。
男は苦笑しながら、話を進める。
夏油傑
君に頼みたいことがあるんだ。
あなた
明日は三者面談があるので、
もう帰りたいんですが···。
そういえば、ここ、何処ですか?
夏油傑
マイペースだね、君は。
でも、帰す訳には行かないよ。
12月24日まではね。
あなた
どうしてですか?
夏油傑
君が唯一、百鬼夜行を
無傷で止められるからだ。
あなた
なんですか、それ?
私にそんな事できないと
思いますけど。
夏油傑
知らないのかい?
能力のことも?
···まぁ、秘密だよ。
あなた
(能力?
あの人もそんな事言ってたな···。)
ここが何処なのかも?
夏油傑
そんなに気になるのかい、この場所?
ここは東京だよ。
「東京」
その言葉を聞いて、あなたの目が少し輝いた。
あなた
東京!
高くて小さな美味しいスイーツ!
夏油傑
なんだい、その呪文?
あなた
···すみません。
忘れてください。
あなた
···で、24日まで東京ここに居れば
いいんですよね?
夏油傑
話が早くて助かるよ。
廃墟ここに居てくれるのなら、
手荒なことをしなくて済む。
あなた
じゃあ、早速カフェ巡りを···
夏油傑
駄目だよ。
ここ=廃墟
だからね。
あなた
···やっぱり帰っていいですか?
それより、
拐うのが早すぎるんですよ。
まだ24日まで1週間ありますよ?
夏油傑
帰らないでくれたまえ。
受験生を邪魔するようで
申し訳無いが、
高専に先を越されないためには
仕方ないんだ。
あなた
(その高専からスカウトされたから、
進路には困って無いんだけどなぁ。
まぁ、黙っておこう。)

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