第11話

『ふたりきりの時間⑤』

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2019/07/01 04:09

凛

柑奈ちゃんさ、最初に比べたらすっごく喋ってくれるようになったよね

なるみ

本当、そうだよね。転校してきた日なんてさ、誰とも関わりたくない子なんだと思ってたよ。なんて言うか、ツンツンしてる感じ？

図星を突かれて、心臓が痛くなるほどに騒ぐ。

間違ってない。
私は実際、ここでも誰にも関わるつもりはなかった。

だからきっと、無意識にでも人を遠ざけたい気持ちがにじみ出ていたのかもしれない。

南野柑奈

(でも、今は)

南野柑奈

最初はすごく緊張してて……。嫌な思いさせてたら、ごめんなさい

北川大輝

違うよ、柑奈

南野柑奈

？

北川大輝

今は仲良くなれて嬉しいって意味だよ

南野柑奈

！

凛

そうそう！　思ってたよりいい子で安心した

なるみ

思ってたよりとか言わないの

大輝くんがいて、そこには笑顔であふれていて、その輪の中に私もいる。

南野柑奈

(こんな日が、少しでも長く続けばいいのに)

＊

ふたりがいなくなって、またこの部屋には私たちのふたりだけ。

北川大輝

あー、うるさかった。作業全然進まなかったわ

南野柑奈

皆、大輝くんのことが大好きなんだね。教室でも人気者だし。すごいよ

南野柑奈

(隣の席じゃなかったら、同じ部活じゃなかったら。きっと今頃、私なんか大輝くんとは話も出来ていない。本当は、遠い人……)

北川大輝

柑奈は、まだ慣れない？　うちの学校

南野柑奈

えっ？　そんなことないよ。私は、大輝くんが仲良くしてくれて嬉しい。それに、凛ちゃんやなるみちゃんとも話せるようになった。それだけで、奇跡だと思ってる

北川大輝

大げさだよ、何言ってんの

南野柑奈

大げさじゃないよ。本当に奇跡なの。私はずっと、人と関わっちゃいけないと思っていたから。色が見えないことでいっぱい気をつかわせちゃうし。前の学校でも、友達作りは諦めてたんだ

思い出すのはいつも、引きつった笑顔。
人と関わったって、仕方ないと思っていた。
傷つくだけだから。

だから、自分から近づくのをやめた。

それなのに、大輝くんは初めからそばにいた。
私がモノクロ症だと知っても、変わらず。

北川大輝

そいつら、もったいないな。そんなの関係なく、柑奈はすげーいい子なのに。俺は、柑奈とこうやって話すことが出来て、よかったと思ってるけど

南野柑奈

ありがとう。大輝くんがそう言ってくれるだけで充分幸せ

南野柑奈

(本当にそう思っている。だからそれ以上は、望んじゃいけない)

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第12話『ふたりきりの時間⑥』

角川ビーンズ文庫

コンテスト受賞作品

グランプリ

好きになるのはキミ限定【完結】

なぁな

編集部コメント

主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした！<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。