美術室の窓から、陽の光が差し込んでいる。
雲ひとつない空。それはきっと、青空。
大輝くんが言っていた、太陽はキラキラ暖かな色で私たちを照らしている。
大輝くんが、私の顔を見て目を見開いて驚く。
大輝くんの呟きに、私は自分の頬に両手を当てる。
大輝くんの顔を見ると、いつもよりもグレーが少し濃くなったような、そんな色をしていた。
この色には、見覚えがある。
いつかの美術室で、自分の顔を鏡で見た時と同じ。
大輝くんはいつも、一度も見たことのない色を私に見せてくれる。
思いもよらない告白の後、私の顔を見て大輝くんは笑う。
*
ふわふわ夢見心地な私の手を引いて、大輝くんは校舎の中に戻る。
階段を上がって、4階、美術準備室へ。
ひとつのキャンバスにかけられてある布をめくった。
そこから現れたのは……
ずっと濃いグレーに染まった顔が、私を見て笑う。
きっと私も、同じ。
大輝くんの大好きな、赤。
*
誰もいない美術室。
そこには、カラフルな彩りの中で笑う少女の油絵と、モノクロだけで描かれた笑顔の少年の絵が並んで置いてある。
それは窓の光に照らされて、キラキラと輝いていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。