第13話

『恋に気づいた夜』
8,732
2019/07/15 04:09
北川大輝
北川大輝
うわっ、外真っ暗じゃん! ごめん、こんな時間まで付き合わせて
南野柑奈
南野柑奈
ううん、私が勝手に残ってただけだよ
北川大輝
北川大輝
集中すると、時間とか分かんなくなっちゃってさ。そろそろ帰ろ
窓の外が暗くなる頃、私たちは下校することにした。
凛ちゃんとなるみちゃんが言っていた雨は、すっかり上がっている。

大輝くんとはいつも、校門を出たところで反対方向に別れる。
南野柑奈
南野柑奈
(うわ、本当に真っ暗だ……。 夜は苦手なんだけどな)
モノクローム症候群は、全てがモノクロに見える。
ほとんどを闇に染める夜は、私にとってはますます暗く、見えづらくなってしまう。
南野柑奈
南野柑奈
(怖いけど、ゆっくり帰れば大丈夫かな。毎日通って道にも慣れてきたし、さすがに迷ったりはしないだろうし)
南野柑奈
南野柑奈
じゃあ、私こっちだから
北川大輝
北川大輝
あっ、柑奈、駅行くんだよな
南野柑奈
南野柑奈
うん、電車だから
北川大輝
北川大輝
俺も行っていい? ちょっと駅ビルに用あるから
南野柑奈
南野柑奈
そうなの?
南野柑奈
南野柑奈
(駅ビルに用って何だろう。買い物とかかな。理由が何でも、まだ一緒にいられるのは嬉しいな)
南野柑奈
南野柑奈
もちろん。一緒に行こう
いざ隣に並んで歩くとなると、緊張してしまう。
ふたりきりなのは、美術室でも同じなのに。

真っ暗な道路を確かめるようにゆっくりと進む。
不思議なことに、私よりも脚の長い大輝くんも同じ歩幅で進んでる。

そういえば、思い返すといつもそう。
美術室から校門の別れ道に行くときにも、大輝くんは私と同じスピードで進む。
南野柑奈
南野柑奈
(さりげなく私に合わせてくれてた……?)
ポッと火がつくように、自分の頬が熱くなるのを感じる。
南野柑奈
南野柑奈
(さすがに、それは自意識過剰すぎるかな)
北川大輝
北川大輝
ふあぁ……
隣で大輝くんが大きな口を開けてあくびをする。
南野柑奈
南野柑奈
眠いの?
北川大輝
北川大輝
ごめん。最近、寝不足気味で。毎日早起きしてるから
南野柑奈
南野柑奈
早起き? 朝から何かやってるの?
北川大輝
北川大輝
え!? いや、あの、……ゲーム! 新しいゲームのレベル上げとかさ! うん!
南野柑奈
南野柑奈
そうなんだ
南野柑奈
南野柑奈
(どうして焦ってるんだろう。早朝からゲームなんて、悪いことをしてるわけでもないのに)
北川大輝
北川大輝
あ、駅、着いたな
南野柑奈
南野柑奈
もう? なんかいつもより早かったかも
南野柑奈
南野柑奈
(夜なのに、歩くのも怖くなかった。大輝くんが隣にいてくれたおかげかな。ずっと、別のドキドキはあったけれど……)
北川大輝
北川大輝
じゃあ、俺はここで。気をつけて帰れよ
駅ビルに用があると言った大輝くんは、駅構内に入ろうともせず、きびすを返す。
南野柑奈
南野柑奈
えっ、駅ビルは? そのために一緒に……
焦って背中に呼びかける。

暗がりでもハッキリと分かる。振り向いたのは、イタズラっ子みたいな笑顔。
北川大輝
北川大輝
また明日!
ひときわ大きく自分の胸が高鳴る音を聞いた。
南野柑奈
南野柑奈
(もしかして、暗くなったから送ってくれた? それとも、大輝くんも私と同じで、もう少し一緒にいたくて……?)
私はブンブンと首を横に振る。
南野柑奈
南野柑奈
(自意識過剰! 調子に乗るな、私!)
頭では分かっていても、ドキドキと騒がしい胸の音は収まりそうにない。
南野柑奈
南野柑奈
(でももし、同じ気持ちだったら……)

プリ小説オーディオドラマ