次の日、重たい気持ちを抱えて登校する。
教室に入ってすぐに、ふたりで雑談をしていた凛ちゃんとなるみちゃんの姿が目に入った。
ふたりは私と目が合うなり、「行こう」と、目をそらして教室を出ていった。
うつむき加減に自分の席にかばんを置く。
大輝くんのかばん自体は机にかかっているものの、本人は教室内にいない。
ホッと息を漏らして、席に着いた。
*
大輝くんは昨日みたいに遅刻ギリギリのところを、飛び込むように教室に入ってきた。
大輝くんはクラスメイトと笑いながら席に近づいてくる。
ドクンドクンと胸の音がうるさい。
ガタンと椅子を引く音が聞こえて、ビクッと体が強ばる。
うつむいていても、私たちの間に気まずい空気が漂っていることを感じる。
顔を上げられない。
大輝くんを見たら、泣いてしまいそうで。
教室の扉が開いて、先生が出席簿を持ちながら入ってくる。
授業が終わって、私はすぐに教室を抜け出した。
授業が始まるギリギリに教室に戻って、終了のチャイムがなったらすぐに席を立つ。
それからは、ずっとその繰り返し。
大輝くんの顔を、少しでも視界に入れないように。
昼休みになって、私は弁当箱の包みを持って教室を出た。
いつもなら、教室の自分の席にいたけど……。
校舎の外に出て、人の気配がない裏庭に行って、ホッとため息をひとつ。
思い出すと涙がこぼれてきて、慌てて手の甲で目元を拭った。
*
それから一週間。
大輝くんは毎朝遅刻ギリギリの時間に教室に飛び込んできた。
毎日かばんは机に置いてあったから、教室じゃないどこかにいるということ。
私は相変わらず、休み時間のたびにに席を立つけど、初めのうちは引き止めたがっているような声を漏らしていた大輝くんも、すでにそうはしなくなっていた。
痛む胸を、私は自分の手で押さえた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。