周りは暗くなり、月の光が襖から差し込む。

「ぁ、やっ、う、わた、なべ、さまぁ、っ」
💙『なに、ここがいいの？』
「やだっ、おやめ、くださいっ、ん、」
💙『ほら、早くイけ』
「っう、っ〜〜〜〜〜！！！」

俺は今日も来る客の相手。
することはそこらの風俗嬢と同じ
来た客の相手をする。

💙『俺がここに来てんの内緒な。』

今日の相手は渡辺様。
いい家の出でここらじゃ有名な名前。
政略結婚をされたそうだけど、上手くいっておらずここによく来ては俺を指名する。
昔の恋人が俺に似てるらしい。

「わかってますよ。」

俺がそう言うと崩れた服を気直し部屋を後にする。

こんな生活いつまで続くのだろうか。

 
 
 
 
こんな生活が始まったのももう何年も前の話
俺の家は貧しく、1日1食しかご飯が食べられない状態で。
そんな中で両親は蒸発。
俺と妹を置いて行方を晦ませた。

それからすぐに借金取りが家に来てあっという間に俺らは奴らの所へ連れていかれた。

俺らに向かって金を払えと言い出す。
分かりきってはいたが妹はまだ街で働けるような年齢ではないし、金もない。
俺は働いてはいたが、1日を過ごすのがやっと。
妹を学校に行かせるためのお金も稼ぎ、何個もバイトを掛け持ち常にボロボロ。

そんな時に言われたのが客の相手をする仕事。
俺がやらなきゃ、妹がやらされる。
そうして俺が引き受け今に至る。

妹を無事に卒業させ、そのまま俺は妹の前から姿を消した。
こんなに穢れてしまった俺と一緒にいては妹に心配と迷惑をかけてしまうから。
俺はここでしか生きれなくなっていた。

 
 
襖の向こうから次の客が来たとの話。
俺は服を気直し客の入りを待つ。

そうして入ってきたのは外国人顔の背の高い男

「初めまして、宮舘涼太です。」
『……』

黙って俺のことをじっと見つめる彼

「どうぞ、中へお入りください。」
『ああ、』

調子が狂う。
大体の人はすぐに抱き潰すんだけど……
彼は違うかった。

『君は、俺の相手してくれるんだよね？』
「はい。なんでも。」
『なんでも？』
「はい。」
『SEXも？』
「はい。」
『へーー。』

ここがどこか知ってんのかな。
表ではバーみたいなキャバみたいな。そんな感じで。
裏のここを知ってるのはごく一部の人間に限られてくるはず。

『ねぇ、涼太くんだっけ』
「はい」
『ちょっと付き合ってよ。』
「え、」

そう言われ手を引かれ俺は部屋から出た。

「ちょっと、」
『え、なんでも付き合ってくれるんじゃないの？』
「そうは言いましたが……」
『じゃあいいじゃん！』

そのまま車に乗せられ俺は彼に着いていった。

着いたのは大きな御屋敷。
表札には佐藤の文字

家の入口だろうか彼が扉を開けると真ん前には長い廊下と左右の壁には使用人であろう人がずらっと並んでいた。

『今日、俺の部屋に誰も近づかないで。』
『ご飯も外で済ませてる。風呂だけ用意しといて』

かしこまりましたとはけていく使用人たち。

「えっと、一体これは……」
『ああ、あんなとこじゃ俺が落ち着かなくてさ』
「ここは？」
『俺ん家、なんでも付き合うって言うから』
「なにを……するのですか？」
『俺の相手！』
「そういうことの……ですか？」
『うーん、それよりかは俺の話し相手になってほしいの。』

それから本当に本人の言ったようにずーっと話を聞いてるだけ。
内容は街の話から彼の身近な話まで。
まるで水の溜めていたダムの堰を切ったように溢れる。

『……って、俺ばっかりはあれだよね』
「いえ、とても面白いですよ」
『君はどんな生活をしてきたの？』
「……俺は、」

彼のように明るく話せるものが無い。
なにせ最悪な人生しか送ってないから

「大したことはないですよ。」
「それよりも2つ、お聞きしたいことが」
『ん？どうしたの？』
「お名前を……」
『あーー！！ごめん名前言ってなかった笑』
『俺、ジェシーって言うの！』
「ジェシー……様？」
『ジェシーでいいよ〜！！』
「いえ、そういう訳には……」

そう言うと涼太は固いな〜って言われた。

『あとひとつは？』
「俺を、ここに連れてきた理由を、」
『理由？』
「はい」
『理由なんて一つだけ』
『涼太が好きだから』
「……え？」

ジェシーから返ってきたのは思ってもない返事。
好き？俺を？

 
 
 
 
 
❤side

『涼太は覚えてるかなぁ』

俺たちが会ったのはほんの数ヶ月前。
会ったと言えど、正確には俺が涼太を見た。
そっちの方が正しいかも。

俺が妹に誕生日プレゼントに髪すきを買いに行った時。
同じように髪すきやらを見てる人がいて。
横顔がとっても綺麗で、佇まいが上品で
てっきり美人な女性だと思ったら男性で。

『1秒たりとも涼太を忘れられなくて』
『俺は使用人たちに捜索届けを出してやっと見つけたんだ』
『涼太普段外に全く出ないでしょ』
「はい……」
『こんなに美人だからみんな好きになっちゃうのかな』
「いえ、そんなことは……」
『AHAHA照れてる？』
「いえ、そんなことは、っ、」
『耳赤いよ？』

そう耳元で話すとピクっと動く体
床に着いている手の指を絡める。
どこからとなくするキスはとても優しかった。

「んっ、」

少しはだけている浴衣に手を入れる。
彼はすんなりと受け入れてくれる。
隙間から見える他の奴に付けられた痕をみて嫉妬心が芽生た。

さっき無理やり連れてきたもんな
他の相手もしてたから後ろは既に緩かった

『もう挿れていい？』
「はいっ、ぅ、はぁ、」
『涼太、』
「ジェシー、っ、さまっ、」
『ジェシーって呼んで、』
「っ、、じぇ、しい、っあ、、」

動き出すと浴衣は崩れ、真っ白な肌が見えた。
俺は既に付けられていた痕を1つずつ上書きするようにキスをした。

 
 
 
 
 
目が覚め体を起こし襖の方を見ると開けた所に腰掛けていた。
 
❤side

「おはようございます……と言ってもまだ夜中ですけど」
『ん、ああ、俺寝てた？』
「はい、ぐっすりと」

本当は抱きしめられながら寝てたってのは恥ずかしくて言えない。

『なんでここ？』
「え、あ、いけませんでしたか？」
『大丈夫だよ。』
『誰かここに来た？』
「あ……1人、服を持ってきてくれて……」
『風呂にはもう入ったの？』
「いえ、」
『じゃあ朝入ろう』
「かしこまりました」

俺が座っているところの横に腰を下ろすジェシー

『ねぇ、涼太』
「いかがなさいました？」
『俺んとこに来る気ない？』
「え、」
『涼太のこと気に入ったし、なによりも好きになっちゃったし。』
「あ、いや、でも、」
『妹さんのこともなんとかしてあげる』
「！！！」

妹が居ることは俺と店の奴らだけのはず。

『ごめんね、涼太のこと調べてたら見つけた』
『別に危害を加えるわけじゃないから気にしないで』
「…………亮華……」
『亮華ちゃん、結婚するらしいよ。』
「……」
『もう荷、降ろしていいんじゃない？』
『俺がずっとそばにいてあげる。』
「…………1週間、時間をください。」
『ん、いいよ』
「それまでに、」

 
 
 
 
車の中は静かだった。
無音。
ジェシー様は窓の外を眺めている

「送っていただきありがとうございます」
『ううん、俺もいきなりごめんね』
「いえ……」
『ゆっくりでいいから。1週間じゃなくても。』
『今後の涼太の人生にも関わってくるからさ』
「はい。ありがとうございます」

彼に似合う真っ黒な車が見えなくなるまでお辞儀をする。
同時に中から出てきたオーナー

「なにもないですよ。」

無愛想にオーナーに返事をし部屋へ帰った。
 
 
 
 

今日の客の顔ぶれは普段と変わらない。

💙『なあ涼太』
「……いかがなさいましたか。」
💙『涼太好きな人出来た？』
💙『好きな人ってか愛人？』
「……いえ。」
💙『ふーん。』

そう言われまた押し倒される。

「ちょ、」
💙『いいじゃん。時間まだでしょ？』

いくら渡辺様と体を重ねたって、他の客と体を重ねたって。
思い出すのはあの優しくも激しいジェシー様との行為。
会いたくて、会いたくて堪らない。
もうこれは恋なのか？愛おしくて、まるで恋する乙女の様で。

俺はいてもたっても居られなくなり、電話を掛けた。

『はーい。』
「もしもし、宮舘です」
『あれ、涼太？何日ぶり？』
「5日ぶり、ですかね」
『久しぶり〜！』
「お久しぶりです」
『どうしたの？』
「あの、その、」
『ゆっくりでいいよ。』

ジェシー様のそばに居たい。
そう言いたいけど言葉が詰まる。

「迎えに、きて、」
『今どこ？』
「お店、」
『迎えに行くよ。服着替えて待ってて』

俺の考えてることが分かったのか
言われた通りに服を着替え待っていた。

表から走ってくる足音
バタンと開いた襖の先には会いたくて、恋しくて堪らなかったジェシー様がいた。

『ほら！！急いで！！』

手を引かれ、着いていくと後ろからオーナーの声。

【いや、俺んとこの看板持ってかれると困るよ！】
『1人減ったくらいどうってことないでしょ』
「……ジェシー様、」

ジェシー様は胸元に手を入れ、バッと手を振った。
と同時に目に入るのは札。

『欲しいならいくらでもくれてやる。』

車からもケースを何個も出す。

『これで十分でしょ』

俺を車に連れ込み店を後にする

「ジェシー様、」
『様じゃないよもう』
「え、」
『今日から俺の恋人でしょ？』
「あ、」
『今から結婚式場行くから』
「え、誰の、」
『亮華ちゃんだよ』
「亮華の？」
『そーー。』

結婚式場に着くともう既に式は始まっていて
庭の方から賑やかな声が聞こえた。

ぱっと庭に顔を出すとブーケを投げる愛らしい妹が居た。
とパチッと目が合った。
俺は逃げる様に外へ出た。

💚「お兄ちゃん！！！！」

車に乗ろうとした時、真っ白なドレスを着た亮華が俺の元に走ってきた

「亮華、」
💚「お兄ちゃん、なんで、」
「ごめんね、亮華」

そう言うと離さんと言わんばかりに強く抱きしめられる。

💚「よかった、っ、」
「心配かけてごめん。」
💚「ばか、お兄ちゃんのばか、」
「花嫁姿、見れてよかった。」
「とても綺麗だよ。流石自慢の妹」
💚「そんなに褒めないでよ笑」

心配して出てきたのだろうか、新郎さんが入口に居た

「ほら、旦那さん心配してるよ」
💚「あ、ほんとだ、それに時間、、」
「苗字は何になるの？」
💚「佐久間だよ」
💚「お兄ちゃんは？」
「うーん、俺は……」

そう言ってジェシーの方を向いた。

⛄️❤side

「佐藤…………かな？笑」
💚「そっか、お兄ちゃんも幸せそうだね」
💚「また家に遊びに来てよ、ジェシーさんと一緒に」
「え、なんでジェシーのこと」
『そりゃ、式場に急に連れてくのはあれでしょ？』
『アポ取りしたの』
「ああそうなの……」
💚「ジェシーさんもありがとう」
💚「お兄ちゃんもありがとう」
「ほんとにおめでとう」
💚「あ、時間やばいかも、じゃあね！！」
「転けるなよ笑」
💚「もうそんなドジじゃないよ！」
💚「また会おうね」
「うん」

 
 
『久しぶりの再会どうだった？』
「嬉しさ半分、寂しさ半分かな。」
『じゃあその半分俺が幸せにしてあげる』
『これからよろしくね。涼太』
「ふふ、よろしくね、ジェシー。」

家に着いてから車の中でプロポーズ紛いなこと受けたのに家でも盛大に祝われて、改めてプロポーズされて
何円するか想像もつかない指輪貰って。
幸せいっぱい。
勇気を出してよかったって。

月の明かりに照らされて、初めて愛し合った場所で俺たちは優しくて、熱くて、深い、永遠を誓うキスをした。