2者面談から1週間後、発作も起こることなく熱も下がり、退院となった。
そして、退院した次の日から学校へ行った。
「…おはようございます…」
「…」
誰も返事をしなかった。
だけど、そんなの慣れっこだった。
しかし、誰も言わない中、1人だけ挨拶を返してくれた。
「おはよう!新谷!」
(え、どうして皆挨拶しないのに佐野さんはしてくれるの?)
「え、何?みんな新谷に挨拶しないん?」
「……」
「黙っているだけだと分からないぞ。」
「……」
「あぁ、いいよ。佐野さん。私別に気にしていないから」
「挨拶は基本中の基本だ。」
「そんなのは知っているけれども、相手側に挨拶する気がないのに無理矢理させるのも違うでしょ。」
「……そうだな。」
これで、挨拶の件に関しては一件落着(?)した。
そして、今野先生が入ってきてSHRをやり、授業が始まった。
〜お昼休み〜
この学校のお昼は、どこで食べてもいいことになっている。
私は教室を飛び出し、誰も居なかった空き教室でお昼ご飯を食べた。
"誰かとお昼ご飯、食べてみたいけど、でも、1人は1人で1番落ち着くんだよなー"
なんて、思いながら食べていると、ドアが開いた。
見ると、同じクラスの如月沙希(きさらぎ さき)さんと、加藤麻鈴(かとう まりん)さんと笹原爽香(ささはら さわか)さんが立っていた。
私は、"ここは3人のお気に入りの場所だったかもしれない"と思った。
「あ、ここ。使いますか?どうぞ。」
そう言いながら、弁当の蓋を閉めて、退出しようとした。
でも、3人は、それを止めた。
「ええー、新谷さんも居ていいのに(笑)」
と、加藤さん。
「そうだよ。わざわざ移動する必要なんかないじゃない」
加藤さんに続けて如月さんが言う。
「え、でも、3人の邪魔をしていますよね?」
「大丈夫!邪魔じゃないよ!」
「えーっと、ありがとうございます。」
私が、そう言うと、如月さんがハッとした顔で言う。
「あ、新谷さんが良ければ一緒に食べませんか?ここの教室で出会えたのは何かの、ご縁です!」
「あ‼️沙希、ナイスアイディア!!」
「私も、沙希と爽香の言う通りだと思うよ〜」
3人の言葉に、驚いてしまった。
こんな私と、ご飯を食べてくださるなんて…このチャンスを逃す訳にはいかない。
「こんな私で良ければ、よろしくお願いします!!」
そう言うと、笹原さんが、「よっしゃ」って言ってガッツポーズをする。
「じゃぁ、食べようか!」
如月さんの、その声で4人での食事が始まった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。