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第4話

「誰にも届かない願い」

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 腹に、強い衝撃があった。最初それが何だか分からなくて、けれど体をこれ以上動かすことができなかった。どさりと倒れ込んで、大佐は自分の下腹部に目をやった。べっとりと赤黒い血が、そこに付着していた。

 「ッ~~~~~~!?」と声にならない叫び声があったけれど、それは銃弾が発射される音と他の者達の断末魔にかき消される。あまりの痛みに声はそれ以上出なかった。大佐の目からみるみる涙が溢れる。痛みでもはや思考が定まらない。


 地獄と思えるほどの激痛の中、大佐は泣きじゃくりながら、少将を呼んだ。




「た──大佐ッ!!」




 誰かが自分の体を抱き起してくれた。大佐は痛みで朦朧とする中、何とかその人物を見上げる。精悍な顔つきの、隻眼の人物だった。普段は鋭利な刃物を思わせるグリーンの瞳が、今は狼狽したようにゆらゆらと揺れて大佐のことを見つめていた。




「クソ──今すぐ止血剤と包帯!」

「はっ」




 短い応答が聞こえるより先に、少将は大佐の軍服を腰のガーターベルトからナイフを抜き取ってそれをびりびりに引き裂いた。患部には汗と血液が混じりあった状態だったが、気休め程度にしかならない止血を行う。

 確実に、致命傷だった。

 銃弾は既に通り抜けていて何処の臓器が傷ついたかも判らなかったが、出血量が既に一リットルは確実に超えている。大体成人女性の失血死する血液の量は二リットルだが、止血剤が作用するまでは三十分以上かかる。


 ──助からない。少将はそう悟った。




「しょ……しょ」

「喋るなァ! 今包帯と止血剤を取りに行かせている、意識を保て!」




 ……けれど。

 少将はもう何度も部下を失っている。部下になる前は上官を失っている。その中で少将は生き残っていた。自分に関わった人物の内死亡したのは57人、その内上官が31名部下が22名、──軍人になる前に失った親友が、4名。
 今日の任務で、また更に、部下が13名。



 ──クソクソクソクソが、ふざけるなふざけるなどいつもこいつも死に腐りやがって。俺のことをどいつもこいつも置いていきやがって。貴様らにどうしてあれだけ怒鳴ったと思っている、学習しろクソが。学習しなければ死ぬのは貴様らの方だろうが。それぐらい理解しろバカども。


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