[てつや視点]
動画の企画でインスタ映え写真を撮らなくてはいけない。
ということでラテアートでしばゆーを描いてもらおうとカフェにやってきた。
入り口には若い女の子がいて、視聴者だったらまずいなと思い帽子に髪を詰め込んで変顔をしながら俯いて店に入った。
事前に連絡していた者です、とだけ伝えて奥の喫煙席に座ろうとした。
1番奥の席になんとなく見覚えのある女の子が座っていた。
ショートカットで白に近い金髪、
胸もとの空いた白いシャツにタイトなデニムの
スキニーにスニーカー。
金色のふわふわとした短い髪の毛を少しだけ巻いてた。
……思い出した、としみつが見せてくれたんだ。
面白い子がいるって。
タイプではないけど綺麗な子だと思ったのを覚えていた。
しかも今日は確かりょうがその子とデートするって言ってた。
早速隣に座ると、眉間にしわを寄せて誰ですか?と、聞かれた。
性格も聞いていたので動じることはなかった。
東海オンエアの…というと、あぁ、とだけ言った。
りょうとデートなんだよね、というと少しだけ驚いた表情をした。
あなた「そうですね、夜から。せっかくここまで来るなら少し探検しようかと思って。」
時間まで聞いていないし無口だと聞いたのにわざわざここにいる言い訳をした。
りょうから聞いたとおり素直じゃないだけで優しい子なんだろうと思った。
それにクールな感じなのに「探検」というワードを選ぶあたりが少し可愛いなと思ってしまった。
でも、ツンとした表情を見ていると意地悪をしたくなるのが男だ。
てつや「楽しみで早く来たのかと思った!りょうが知ったら喜ぶだろうと思ったのにな〜!」
そういうと急に悔しそうな顔をして、
あなた「別に…。そういうんじゃなくて。」
てつや「へー、探検だもんね。笑」
あなた「そうです。」
てつや「じゃありょうにもう近くに来てたよって言ってもいい?」
あなた「いや…。仕事してるだろうし無理して急がれても困るので言わないでください。」
なんかこの子、かわいいな。
りょうが好きになるのもわかる。
素直に楽しみできちゃいました、秘密ですよ!って言ってくれれば意地悪しないのに。
てつや「ふーん、でも女の子1人で探検するには何もなさ過ぎるからなぁ。ラテアートとったら暇だし一緒にドライブしない?」
あなた「いや、色んな風景を見て歌詞にしたいんで。」
てつや「りょうとのラブソング?笑」
あなた「いや別に、本当にそういうんじゃなくて!」
からかうとほんの少しだけ赤くなって怒った。
あんまりいじめるとりょうに怒られるかもしれないのでからかうのはやめた。
てつや「冗談!りょうにわざわざ早い時間にここにいたなんて言わないし。笑」
そういうと少しだけ安心した顔をした。
ラテアートがきたのでインスタ映えするように写真を撮った。
てつや「今日インスタ映えする写真撮らなきゃなんだよね〜。」
あなた「その角度だと影になるから反対側に回った方がいいですよ、あと背景さみしいんで何か置くとか。」
てつや「え、ありがとう。何置けばいいかな?」
あなたちゃんがラテアートを覗き込む。
あなた「え、誰これ。インスタ映えなんてしないですよ。笑」
口元を押さえて少しだけ笑った。
なんだこの子、本当可愛い。
ハッとした表情をして笑うのをやめた。
あなた「お花とかはなさそうなので眼鏡とか時計はどうですか?」
そういうと腕から時計を外してメガネケースからメガネを取りだしてテーブルに置いた。
俺の手に手を添えてこの角度で背景を少しぼかして…、
そう言って真剣な顔で教えてくれた。
てつや「カメラとかやるの?」
あなた「趣味です、音楽と同じで芸術みたいなもんじゃないですか。」
そういうとまた少し笑ってくれた。
りょうより先に知り合ってたら俺が惚れてたかもなぁなんて思った。
ラテアートのしばゆー以外は素敵な写真になった。
しばゆーコーヒーを飲み干すまであなたちゃんと色々話した。
目の前にいる気の強そうな誰よりも女の子なあなたちゃんと、親友のためにも触れられた手の甲が熱いのは言わないことにした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。