[としみつ視点]
あなたのライブ、
りょうが出てきた笑顔のあなたをみて切なそうな顔をする。
あまりにも眩しくて楽しそうで。
俺は何度か見ていた。この顔を。
りょうより前に知り合ってるから当たり前なんだけど。
この顔が好きになった。
でもりょうはその顔を見てこの表情だ。
どれだけ欲張りな男なんだろう。
今がどれだけ幸せか分からないのか。
そう思いつつも友達のそんな顔は見たくなかったからフォローした。
何度も聞いたあなたの歌。
何度も聞いてたあなたの悩み。
個性の話。
好きな曲を作りすぎるが故の個性の無さ。
器用だからどんな曲でも作るしどんな楽器だってできる。だからこその悩みだった。
それを見つける時があなたがもっとでかいステージに上がる時なんだろう。
つい音楽のことになると口を出したくなる。
そんなはなしをするとりょうは
「どの曲も最高だよ。」と言った。
そういうことじゃない。俺だってそう思ってる。
その最高な曲にどれだけ個性を乗せられるか。
それだけだった。あなたがもっと輝くためには。
もっと大きなステージに立った時、あなたはどんな顔で笑って、どんなことを言うのか、泣いたりするのか。見てみたかった。
そう考えていると聞いたことない音。
そうか、新曲作るって言ってたもんな。
…これ聴きたくないやつだ。
とっくに諦めたと思っていた。
心臓の痛さが諦めきれてない気持ちを強く理解させた。
「初夏の海みたいな余裕な顔して人を惹き込む、
私もつられた中の1人。」
「少しだけ冷たい水面も入ってしまえば、心地よさに溺れてしまう。」
「冬になって見向きもされなくなった時、私が太陽になってまた暖めてあげたい、そう思えた。」
溺れるような恋がしたい、そんなことを言っていた気がした。
りょうがその相手だったんだ。
俺はとっくにあなたに溺れていたのに。
気付けば目から何かが溢れ出しそうだった。
「Blue.満点の星空よりも、輝く月よりも、金銀財宝だってなんだって君には敵わないよ。」
「Blue.難点は完璧なとこ、輝く笑顔さえ、隠してほしい、だってそうだって君には僕がいるから。」
やきもちなんて、妬くんだ。
りょう、今のあなたの顔見ろよ。
どの曲よりも最高の顔で歌ってる。
こんな顔見たことない。
りょうは俺を見て笑ってた。
少しだけ怒った。
あなたがりょうのために作った曲をしっかりと聞いて欲しかった。
それがあなたにとって1番幸せなことだろうから。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。