[りょう視点]
あなたの吸う煙草は12ミリ。
結構キツめの分類だと思う。
でも今日は6ミリの煙草を吸っていた。
りょう「煙草変えたの?」
あなた「うん。」
付き合う前のLINEや電話での「うん。」は少し寂しかったけど目の前で少しだけ笑って言う「うん。」は心地が良かった。
りょう「なんで?」
あなた「煙草、辞めようかなって。」
りょう「どうした?」
お世辞にも体に良いとは言えない煙草を吸う横顔が好きなんて言えない。
初めての夜の煙草を吸って切なそうな顔をしたあなたが浮かんだ。
あなた「りょう、吸わないし。もう窓開けたら寒いし、だからと言って家の外で吸ったら迷惑でしょ?子供とか通るし、お隣さんだって吸わない人かもしれないし。」
まさかそんな優しい理由だとは思ってなくて失礼だけどびっくりした。
りょう「家の中で吸っても良いよ?」
あなた「…りょうの匂いじゃなくなるから嫌だ。」
照れるそぶりもなく少しだけムッとした表情であなたはそう言った。
りょう「あなたの匂いになるならいいやん。」
あなた「りょう、煙草吸う女好きじゃないでしょ。」
さっきは照れてなかったくせに少しだけ恥ずかしそうにあなたはこっちを見た。
そしてこう続けた。
あなた「…初めて、好きな男の為に自分変えたいと思った。自分の好きなようにやるって決めたから、だからこそ、自分の好きなように好きな人のために煙草くらい辞めたい。」
いつからこんなに素直になったのか。
これじゃ煙草吸うあなたも好きなんて言えない。
日に日に好きになるし、毎日俺の中の歴代の可愛いを更新する。
煙草をやめるのは良いことだけど、煙草を吸うあなたもあなたの煙草の匂いも、その煙草の匂いのキスも、もうとっくに好きになってしまっていた。
あなたが買い忘れた時の為にいつもストックしてある煙草を取り出して火を付けた。
りょう「じゃあこれ、俺が吸うね。」
あなたが慌てて、りょうはダメ。と言って煙草の火を消した。
りょう「なんで?」
あなた「体に悪いし、本当は煙草なんてカッコよくないのに外でこんな良い男がタバコに火つけてたらカッコよく見えちゃうんだよ?」
真面目な顔で言った後にあなたがハッとして誤魔化すように俺の胸に顔をうずめた。
やっぱり、可愛くて、言いたくないことも言ってしまう。
りょう「俺もあなたが煙草吸ってる時かっこいいなって思ってたよ。終わった後にぼーっとしながら煙草吸ってんのエロいし。」
あなた「ばか…。やめれないじゃん。」
りょう「辞めなくていいよ、今は。一緒に暮らし出したら辞めてもいいけど。」
あなたが寝てる間とか、居ない間にあなたの煙草に火をつけてたことは言わなかった。
あなた「でも、タバコはこれにする。」
りょう「なんで?」
あなた「…パッケージ。」
なんの変哲もないパッケージを見てハッとする。
可愛くて、強く抱きしめた。
あなたがツンとした顔でウザいって言って俺の顔を見てキスをした。
テーブルの上には青色のパッケージの煙草があった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!