第8話

過去
1,418
2019/10/15 06:44
[としみつ視点]

明日はりょうとあなたがデートする
らしい。

俺は何かを食べるとかどこかに行くってことを
あなたとしたことはない。

あなたは元々綺麗な子だった。
3ヶ月ちょっとの付き合いだけどその間に
あなたはかなり変わった。

髪の毛は黒い長いストレートで、
愛想笑いのできる子だった。

笑った顔は愛想笑いだろうと何だろうと
可愛らしくて、優しそうな子というのが
第一印象。

出会って1ヶ月くらいの時に
あなたのバイト先のbarに行くと客として
あなたが来ていた。

マスターと泣きながら話していて、
自分の好きなように好きな音楽を好きな姿で
歌いたい、という内容だった。

その頃のあなたは事務所に所属していて、
事務所の言う通りの服装で言う通りの歌で
こんな風に人に見られるように過ごせ、と
言われていたらしい。

まだ少ししか話したことのなかった俺は
ちょっとこれ見てと言って東海オンエアの
動画を見せた。

自分で言うのも何だが好き勝手言って
コメント欄で叩かれていた動画。

まぁ、俺は遅刻するからお前らが遅く来れば
いいとか言ってたら当たり前なんだけど。

それを見せた後にコメント欄を見せて
俺全く気にしてない好きなように生きてても
声かけてくれるファンも居るし自由にやった
方がいいと言うと、愛想笑いとはまた違う
笑い方をした。

大きく深呼吸をした後に俺に明日も来てね!
と言って店を出た。


次の日には今のあなたになってた。
性格まで今までと違うから常連はみんな
困惑してたが笑いながら本当はこうだからと
言うあなたは可愛くて楽しそうで文句を言う
人間なんか誰1人いなかった。


別れた原因もそこなのか分からないけど、
今のありのままのあなたを好きになってくれた
りょうは俺からしてもありがたい。

幸せになってほしい友人2人が結ばれるとなると
俺も嬉しい。

あの時初めて見た愛想笑いじゃない笑顔を
忘れなきゃいけなくなる時が来たのかと、
小さくため息をついた。


月になる、か。


俺とは違う解釈だった。

大切な存在としてあなたの隣にいる
のは俺じゃなく、りょうがいいと思う。

明日の成功を願って、眠りについた。

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