第70話

笑わない?③
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2020/02/23 18:51
[りょう視点]

あなた「ねぇ、酔ってる。今。早くお家帰りたい。」

見たら分かる。てつやとか虫さんがちょけて飲んでたのに巻き込まれてたしね。

このゲームで負けたら一杯飲む。

みたいなやつ。良い子は真似しないでね。

意外にゲームが弱くて悔しがってもう一回もう一回って。

上達する頃にはこの状態。

虫さんに謝られたけどあなたが上達してからボコボコにやられて虫さん達もかなり酔ってた。



それでもあなたは顔色は変わらない。

顔色は。

あなたから手を繋いできたり、お家に帰りたいとか普段は言わない。

酔っても意外に変わらないんだなと思ったけど、酔い覚ましに少しだけ歩いた。

あなた「りょう。」

りょう「ん?」

あなた「本当はね、お揃いとか好きなんだ。だからスマホケースとかマグカップとか、すごい嬉しかったのに素直に喜ぶとか見せれなくて。」

りょう「ちょっと嬉しそうな顔してたよ。」

あなた「ならよかった。」

りょう「素直なのは酔ってるから?」

あなた「うん、久々に酔った。」

りょう「初めて見たかも。」

あなた「りょういないところではたまに酔ってるよ。1人で飲んだりするし。」

りょう「意外。」

あなた「酔ってる時って意外と歌詞がポンポン浮かんでね。でも酔うとネットで変な買い物しちゃって。」

りょう「変な買い物?」

あなた「うん、パジャマとか、シャツとか。靴とか。」

りょう「変じゃないじゃん。笑」

あなた「ううん、なんかね、全部2人分。私のサイズとりょうのサイズなの。」


照れた様子もなくそう話した。
知らなかったことをあなたがどんどん
話しはじめた。


「あとね、りょうと付き合いはじめてから恋愛ソングが好きになった。」

「酔うと寂しくてりょうが出てる動画見るの。」

「りょうはね、寝てる時たまに口開けてて可愛いなぁって思ってる。」

「パパとママとお姉ちゃんがね、いつもりょうの話するの。また連れてきてって。でもりょう忙しいから、」

「あのね、タバコ減らしてるの。りょうが家きた時タバコ臭いの嫌だなって。」

「本当はずっと手繋いで歩きたかった。」

「本当は色んな人にりょうみたいに優しい彼氏いるって自慢したい。」




「ずっと一緒にいたい。」




ひとつ話すたびにあなたは少しずつ俯いた。

少しずつ小さい声になった。




「本当は不安なの、いつかきっとりょうが私から離れていくんだって。だからお揃いのものなんてあったら後から辛くなるって。」



あなたが目にいっぱい涙を溜めて俺を見た。



いつも強気なあなたではなくて、

ただの女の子だった。


あなたも俺もどこか特別だからと気づかないフリをしてた部分なのかもしれない。

あなたのことを隠すために女の子の話をサブチャンでしたり、女の子のYouTuberとコラボしたり、本当はすごく嫌だったのかもしれない。

あなたも自分でそれを気づかないフリしてやりすごしていたのかもしれない。

情けなくなった。



りょう「俺は離れないよ。お揃いのもの買っちゃったならちょうだい。俺もあなたにたくさんプレゼントしたい。」

あなた「要らないから、離れないで、ずっと隣がいい。」


いつも綺麗だとか可愛いとは思ってたけど、堪えようとしてるのに落ちる涙を隠そうとしてるあなたがどうしようもなく愛らしくて、どうしていいのか分からなかった。

自分の中で綺麗な毛並みの狼だと思ってたらふわふわの子犬だったと喩えたらしっくりきた。

大事にしてるつもりでも、あなたに合わせてるつもりでも本当の気持ちを分かってなかった。

見た目がどんなに派手だろうがツンとしてようが本心は本人にしか分からないことだった。

あなたの中の弱い子犬の部分が見えてなかった。



りょう「あなたって言わないから、彼女いるって言って良い?」

あなた「それはだめ。」



分かってた、多分俺もあなたも。
俺と付き合ってることで有名になってしまうのは
あなたの仕事とかプライドが許せないって。



りょう「不安なんでしょ。」

あなた「うん。」

りょう「じゃあ何かアクセサリープレゼントするよ。毎日つけよう。」

あなた「うん。」

りょう「じゃあ今週の火曜、撮影ないから仕事終わったらね。」

あなた「うん。」


タクシーを拾うまで、ずっとメソメソ泣いていた。

こんな姿を見るのは初めてで、泣かせてしまったのは申し訳ないし情けないとも思ったけど、正直こう思ってくれてるのもこういう姿を見せてくれるのも嬉しかった。


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家の前について、眠ってしまったあなたを抱き抱えてベッドまで行って寝かせた。

そのあと1人でコンビニに行って拭くタイプのメイク落としを買った。

あれだときっと化粧落とせないし、だからといって放置してあなたの肌が荒れるのは嫌だったし。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

家に帰るとあなたが体育座りでまた泣いていた。


あなた「離れないでって言ったのに。」

りょう「コンビニ行っただけだって。笑」


やっぱりどうしようもなく可愛くて、子供みたいに泣くからつい笑ってしまった。


あなた「なんで笑うの?」

りょう「だって5分しか離れてないのに泣くやん。笑」

あなた「りょうのバカ。」

りょう「はいはい、ほらこっち見て。化粧落とすから。」

あなた「ん。」

りょう「肌荒れちゃうからね。」

あなた「うん。」



りょう「はい、落ちた。化粧水とか自分でできる?」

あなた「出来ない。」

りょう「出来るやん。」

あなた「…無理。」

りょう「いや、なんで泣くの。笑」

あなた「何も出来ない。」


仕方ないから全部やってあげた。
たまにはいいなぁなんて思いつつ、
今にも寝そうなあなたに見よう見まねで
スキンケアを施す。


あなた「着替えは?脱がせて。」

りょう「はいはい。」


1枚1枚脱がせて、俺の白いTシャツとあなたが家に置いてった下着をつけた。

いつもこういう格好で俺の部屋を歩いてたりするのに、

化粧を落として幼くなった顔、泣いて少しだけ腫れた目がまだ少し潤んでで、どうしてもエロかった。

いやでも酔ってるし、悩ましい姿にため息をつきながら寝かすことを決意した。

あなた「なんでためいきつくの?嫌い?」

りょう「んー、好きだからため息でたんだよ。そういう顔しないで。」

あなた「嫌わないで。」

りょう「嫌いだったらここまでしないって。俺風呂入ってくるからね。もう泣かないでね。」

あなた「うん。」


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お風呂にお湯を溜めつつ、
シャワーを浴びながら、上がってまだ起きてたら
動画撮っておいて後で本人に見せようかなって
意地悪を考えてた。

絶対恥ずかしがるだろうな。

酔ってても覚えてるタイプかな。


そんなことを考えながらシャワーを浴びていると浴室の扉が開いた。

びっくりして声が出た。


あなた「りょう。」

シャワーも出したままなのにあなたがそのまま俺に抱きついた。

りょう「こら、風邪引くから。」

あなた「ん。」


ダメだなって思いつつもあなたに抱きつかせたまま浴室の扉を閉めた。

そのままキスをした。

白いシャツが透けて素肌の色が見える。


りょう「あとで怒らんでね?」


濡れて髪から滴る水までイヤらしく感じた。


りょう「風邪ひくから一旦お風呂入ろう。」


わざとTシャツのまま、一緒に入った。


りょう「なんか変な性癖に目覚めそう。」

あなた「ん。」

俺の言葉を無視してキスをした。

パンツだけを浴槽の中で脱がせて肌に触れた。
少し触れるだけで普段よりも甘ったるい声を出す。
顔を隠す癖はいつも通り。


あなた「りょう、」

りょう「ん?」

あなた「シてあげる、から、そこに腰掛けて。」


言われた通り浴槽のふちに腰掛けてあなたの愛撫を受け入れた。


いつもより少し暖かい舌と、普段とは違う姿に興奮した。


りょう「それおわり、後ろ向いて。壁に手ついて。」

抱きしめながらゆっくりと腰を動かすとまた声が漏れる。

浴室の中にあなたの声が響いた。

濡れたTシャツと肌の間に手を入れて柔らかさを手で確かめた。

りょう「可愛い。」

あなた「…やだ。」

ここは素直じゃないんだと思いながらも
そう、こういうところも好き。
そう思った。



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[朝]

りょう「スープ作ってあるからね、俺もうすぐ行くからね!」

あなた「……頭痛い。」

りょう「だと思ってスープにしたからね。」

あなた「なんでも食べるよ…。りょうのごはん美味しいし…。」

りょう「明日一旦帰るんだっけ?」

あなた「うん…。」

りょう「あ、俺仕事行く前にこの動画見て?」


お風呂から出たあと、半泣きでもう一回しようとせがむあなたの動画を見せた。

この時の絶望と驚きと恥ずかしさの混ざったあなたの顔は絶対に忘れない。

あなた「早く仕事に行って!あとそれは消して!無理!」

怒られたからすぐに消した。

まぁ、メンバーにいつ見られるかわからないし、こんなところ知ってるのは俺だけがいいから。

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