[りょう視点]
あなたが楽しそうに笑ってた。
文系こそ危険な男しかいない。
正直としみつなら取られてもおかしくないと思うし、てつやは口説きそうだし、ゆめまるはタイプって言われて浮かれていた。
時々様子を見に行っては牽制しているはずなのにどんどん仲良くなる。
好きな子と友達が仲良くしてるのは嬉しいはずなのに、なんとなくモヤモヤした。
あなたはあなたの友達と俺が仲よさそうに話してても何も言わない。
何も言わずにとしみつたちと話してたりもする。
妬かれたいわけじゃない。
ただこっちを見て欲しかった。
楽しくもない会話で笑って見せるけどそんなのも通じなかった。
あなたは1週間俺の家にいる。文系担当だけど、俺は他にも仕事があるから少しおしえてもらったり練習に付き合ってもらうくらいならいいと言われていた。
家に帰って、近くの公園に行って、ダンスを見せると今まで見たことのない笑い方をしていた。
涙目で頬をまっかにして笑うあなたはどう見ても無邪気な少女にしか見えなかった。
笑うな!と言って色々教えてもらってたけど、教え方がうまかった。
あなたいわく、あなたの友達は面白いからわざと教えてないだけかもしれないとのこと。
曲がるべきところで曲がらない関節に2人で笑いながら過ごした。
30分くらいであなたは切り上げようと言った。
あなた「りょう、明日も仕事あるし。」
りょう「もう少しだけ。」
あなた「だめ、また疲れて倒れるよ。」
りょう「でも明日から帰ってきたら飯出来てるんでしょ?笑」
あなた「代わりにダンスの練習あるんだよ。」
りょう「あ、そうかー。」
あなた「一応ダンス教えにきてるからね。いちゃつきにきたわけじゃないの。」
そう言って呆れたように笑った。
23時を過ぎると見渡す限り誰もいない。
2人きりの歩道で手を繋いで歩いた。
あなた「いい年してて繋ぐ?」
りょう「いいやん、明るい時間はデートしにくいし、飯いく時間なんて手繋いで歩けないからね?」
そう言いながら歩いた。
風で少しだけ伸びたあなたの髪の毛がふわふわと揺れていて、いつものツンとした表情の横顔は少しだけ幼く見えた。
数分が数秒に感じて、もっと遠くの公園にすればよかったと思った。
家に着いて、今日は遅いからと買っておいたテイクアウトのご飯を食べた。
あなたは一口ちょうだい、と言って俺の選んだものを食べるとこっちの方が美味しい気がする、といって顔をしかめた。
好きになればなるほどに可愛い女の子にしか見えない。
じゃあ交換しよう、と言うとわざとらしい笑顔で「ありがと〜。」と言う。
ムカつく、なんて言いつつ可愛いなって思った。
その日は2人とも早めに眠った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!