[あなた視点]
今日はズル休みをした。
マスターは分かっていたと思う。
あなた「風邪なう。」
マスター「風邪引いたことないっていつも言ってたのに?例の彼氏?」
と、電話越しでもニヤニヤとしているのがわかる。
あなた「風邪なう。」
マスター「仕方ないな、楽しみなよ。風邪ライフ。」
あなた「ありがとう、ちなみに昨日おつまみは作って冷蔵庫に入れてあります。」
マスター「いや前日から休む気マンマンじゃん。」
学生時代はズル休みなんてよくしてたけど仕事をズル休みしたのは初めてだった。
今日はりょうと付き合って1ヶ月。
記念日を祝いたいなんて可愛い女の考えることかも知れないけど、一回やってみたかったんだ。サプライズで家に行くやつ。
秋とか冬になんて寒くて出来ないからね。
今のうち。
なんて自分に言い訳をした。
自分のことはよく分かってる。
会いたいだけなんだよな。
付き合った日以来2度しか会えてない。
会ったと言っても数時間。
りょうがbarに来た時だけ。
キスマークが消えないうちに二度も来てくれたけどそのキスマークもすっかり消えた。
寂しくなった首元を見て何度ため息をついただろうか。
こんな風に思ってることを知られたら重たいって思われるのかな。
16時頃、車に乗り込み、お気に入りの音楽をかけてりょうの家へ向かった。
大嫌いだったラブソングは今や毎日聴くようになった。
「あなたの前じゃ素直になれない自分がいて分かっているから悔しい…。」
気付けば口ずさんでる。
誰の曲だったかなぁ。なんて考えながら、
また煙草に火をつけて歌い出す。
着いた頃にりょうから電話が来るはず。
すぐに電話するね、ってもういい大人だから記念日なんて覚えてないんだろうけど。
あっという間について駐車場に着いた時ちょうど電話が鳴った。
りょう「もしもし、仕事何時から?」
あなた「んー。」
りょう「え?何?笑」
あなた「あ、ごめん、ちょっと待ってて宅配便。」
急いで走ってりょうの部屋の前に行く。
あなた「もしもし、ごめん。Amazon。」
りょう「なに買ったの?スマホケース欲しいって言ってたけどそれ?」
りょうが喋ると同時にチャイムを鳴らした。
りょう「え、ごめん、俺も宅配便かもしれん。笑」
つい笑ってしまいそうなのを堪えて扉の前で待った。
りょう「…え?いや嘘やん。」
死ぬほど笑顔で釣られてつい笑顔になってしまった。
あなた「鬼サボりかました。」
りょう「これはまじの鬼サボり。笑」
あなた「嬉しいか?」
りょう「シンプルに嬉しい。」
そういうと玄関に入る前に抱きしめられた。
あなた「ほら、電話切って中入れて。」
りょう「うん、俺も明日撮影だから朝早くないし結構一緒にいれるね。」
あなた「知ってた。」
りょう「あー!こんな可愛いことしてくると思わんかった!」
子供みたいにはしゃいで見てるこっちが恥ずかしかった。
もっと格好つけた男だと思ってたのにな。
りょう「ご飯行こう!何も決めてないけど、あ、待って、そういえばとしみつはあなたの飯食ったことあるのに君の彼氏は食べたことないんだけど?」
あなた「あぁ、確かに食べてたかも。一口食べて、食う?って聞いたら食うっていうからお弁当ごと渡したら全部食べられたの。悲しかった。」
そういうと爆笑された。
全部食べるのはあり得ないもんな。
とりあえず少し離れてるけどピザが美味しいお店に行くことになった。
「ピザとビールって合わん?俺運転でいいよ。」
の、言葉につられた。りょうといたら太りそうだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。