[あなた視点]
りょうから早く終わったって連絡がきた。
いつもより緩む口元を押さえながら返事をした。
こんな顔してられないなって、車の中で化粧を直していつも通りの顔でいる練習をした。
タバコを吸って、落ち着いて、吸い終わって深呼吸を繰り返した。
あっという間に時間になって、にやける顔を両手で軽くパチン、とはたいた。
指定された近くのコンビニの駐車場に行くと、既にりょうは居た。私にはまだ気付かない。
スマホを真剣に見つめてた。
もうついた?って送るとりょうは笑顔になった。
これが「キュン」とするということなのか。
思わず笑ってしまった。
ついてるよ、もう来そう?
と、帰ってきた返信に
もう着いたよ。
とだけ送るとキョロキョロと見渡すりょうと目があった。笑顔で小さく手を振るりょうは可愛かった。
りょう「着いてたなら早く言ってよ!」
あなた「真剣にスマホ見てたから。」
私の顔はいつも通りだろうか。きゅっと口元を正して喋った。
あなた「〇×〇×ってどう行けばいい?」
りょう「とりあえずまっすぐ、曲がるとき言うよ。」
OK、とだけ言って走り出した。
あの時みたいな他愛もない会話。
少しだけりょうの香水の匂いがした。
夏の空はまだ明るい。
夕暮れだったら顔が赤くなってもいいのに。
出来るだけりょうを見ないようにした。
りょう「あ、ここ曲がるよ。」
そう言われて右を見るとガラス越しに目があった。
何もなかったふりをして運転を続けた。
そうするうちにお店に着いた。
可愛らしい外観のお店、
りょう「ここね、ご飯も美味しいけど、スイーツもたくさんあって、お酒の種類も多いんだよ。」
あなた「そうなんだ、甘いもの好きなんだよね。甘いものでお酒飲めるもん。」
そういうとりょうは笑って良かったここにして、と言った。
お店に入ると1番奥の席に案内してくれた。
りょうはメニューを開いて
りょう「お酒は16時からだしまずは軽くご飯とか甘いもの食べようか。」
と言った。正直早く甘いものを食べたかった。いつもは朝のチョコレート以外体型を気にして食べないようにしてたから。
迷わずガトーショコラとカタラーナを選ぶとりょうは笑った。
りょう「ごはんは?いいの?」
あなた「りょうのやつ貰うから大丈夫。」
そういうともっと笑った。つられてつい笑ってしまった。
恋人同士のデートみたい。
そう思いながら食べてるともう16時を過ぎていた。
りょう「あ、お酒飲める。笑」
あなた「明日仕事でしょ?大丈夫?」
りょう「家近いから少しなら大丈夫。あなたも飲むなら飲みたいし。」
あなた「じゃあ私赤ワイン。」
りょう「どれがいい?何種類かあるよ。」
あなた「じゃあこれ。」
りょう「じゃあ俺もこれかな。」
あなた「違うのにしてよ、こっちも飲みたい。」
りょうは自分で後から頼めばいいやんって笑う。
よく笑う人だなぁ。
次はこれ飲みたいから違うのにして!と言うとわかったわかったと言ってそれを頼んでくれた。
少しお酒を飲むとりょうは既にほろ酔いだった。
きっと仕事あるし撮影もあるし普段はお酒に慣れていないんだろう。
次はウーロン茶だね、と言うとごめんねそうするって顔をしかめてからまた笑う。
この空間がとても心地よかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!