第55話

素直
942
2020/01/04 04:35
[りょう視点]

季節もすっかり変わってもう秋になった。

あなたと電話をすると、

あなた「濃い時間を過ごしているからなのかまだひとつしか季節が変わってないなんて信じられないな。」

なんて言って笑っていた。

いつのまにか付き合いたての高校生みたいに毎晩電話をしてどちらかが寝るまで繋ぐ夜になっていた。

もう紅葉もそろそろ終わりそうで落ち葉がちらほらと落ちている。

本当は紅葉が綺麗な時期に温泉とかいきたかったな。

「嬉しい」の感情だけは素直だからあなたが感じる嬉しいを増やしてあげたい。

笑った顔を見ると余計にそう思う。

少しだけ伸びた髪の毛を撫でて「可愛い」と言った時の嬉しそうな顔は今まで見たどんな顔よりも可愛かった。

やっぱりハッとしてすぐに目をそらすけどそんな仕草も可愛い。

いつもキリッとしてて凛々しくて女の子にまでキャーキャー言われてるくせして俺の前だと小動物みたいなんだよね。

少しずつ変わっていく彼女が愛おしくて手放したくないって気持ちが大きくなっていく。

気付けばBlueを口ずさんでいるのもきっとそのせいだ。

いつか有名になってしまえばもしかすると俺の歌だって言えなくなる日が来るかもしれない。

今でさえ会えないのにもっと会えなくなるかもしれない。

きっと有名になってしまえばせっかく変わったあなたも別の意味で変わるかもしれない。

そう思うと胸が痛い。

でも歌で成功するのはあなたの夢だから、何も言えない。

あなたも、何も言わない。

だから将来のことに関してあまり口に出せない代わりに、今の気持ちだけは素直になれないあなたの代わりに俺が言いたい。

嬉しい以外の気持ちになった時、俺が1番に気付いてあなたの代わりに言葉にしてあげたい。

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