第32話

ダンス企画⑥
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2019/11/02 09:17
[あなた視点]

今日はダンス企画最終日、そして撮影の日だった。

りょうはやっぱり関節が曲がりきらないけどとても上手になっていた。

今日も理系が使う部屋からは笑い声が聞こえる。

文系は最後の追い込み。

としみつ「あー、そっか、あなた明日帰っちゃうんだもんな。」

てつや「え!じゃあ今日打ち上げやん!」

ゆめまる「お、今日は俺もいける。」

としみつ「酒飲むときだけいけるやん。」

ゆめまる「今日はごわみが実家に帰ってるから。自分で作ってねって言われてたんだよ!」

あなた「嬉しい。みんな楽しくて大好きだよ。」

としみつ「…1番はりょうやん。」

スマホの画面を眺めるとしみつがそういうとてつやが笑う。

てつや「友達2人にヤキモチ妬いてるやん。笑」



としみつはこういうところがあったな、意外と寂しがりやで私が話してる途中に他の人のお酒を持っていくと「今俺の話だったやん。」なんていって不満な顔をする。

それも年上のくせに弟感のあるとしみつだからこそ許されていた。

すっかり常連になったとしみつは他のお客さんとも顔見知りになって楽しそうにしてたけど、こういうところでも寂しそうにするんだと思うと、姉しかいない私は弟が欲しくなった。

思えば文系はみんな弟みたいな性格の男ばかりで1週間だったけどお姉さんになった気分だった。

撮影が始まった。

小さいスタジオを借りてカッコいい衣装を着てのダンス。

振り付けがそれぞれ違うので見てて楽しかった。

しばゆーだけ絶対に友人が振り付けしたものじゃないと分かった。

お腹が痛くなるまで笑ったのは久々だった。

動画の後半に〇〇さんのここが〜と総評をする場面も撮り終えた。

打ち上げは全員参加。

りょうがLINEで「せっかく最終日なのにー。」と言っていたのは内緒。

2時間くらいがたってみんな結構酔ってた。
酔ってないのは私の友人だけだった。
可愛い顔と身長のくせに酒豪なんだよな。


としみつ「りょう、泣かすなよ〜。」

りょう「当たり前やん。」

としみつ「あの曲さ、ほら、りょうが初めて聞いたあなたの曲、」

りょう「ん?」

としみつ「りょうは月になるって言ってたけど月なんかじゃダメなんだわ。太陽に…なんないと。」


そう言って眠ってしまった。


あぁ、そうか。深く考えずに失恋した思いのまま15分で書き上げた歌詞を思い返す。深く考えてくれたことに嬉しさとちょっとの罪悪感を持った。

りょう「いや、違うね。」

あなた「何が?」

りょう「だって太陽はあなたやん。あなたがこうやって支えてくれて、毎日を楽しいって思わせてくれるから俺は輝けてるから。あなたは1人でも輝けるけど、俺はあなたがいなきゃ…」

てつや「いちゃつくな!!!そこ!!!」

虫眼鏡「あ〜もうてつやうるさ。今は寝かせて。」

ゆめまる「いや、飲もうよ。」

机に突っ伏したままの、としみつとしばゆーは喋らない。

こんなキザなことを恥ずかしげもなく言えるところがりょうのいいところなのかもしれない。

あなた「りょうも、太陽だよ。ありがとう。」

そういうと机の下で手を握ってくれた。




りょう「家まで辿り着ける気しないからどうにかしてね…。」


また1人、机に突っ伏してしまった。

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