自宅に到着し、アキ姉との電話を切るとどさっとベッドに倒れ込む。
業務時間中は別の仕事に追われていたからチェックできなかったけれど。
今日は確か、別の配信者さんのチャンネルに呼ばれてのコラボ配信だったはずだ。
最近はバーチャルなアバターを使用して動画投稿を行う配信者の方も増えている。
そんな配信者さんとのコラボレーションということで、今日は楽しみにしていたのだけれど。
リアタイできなかったことをちょっぴり残念に思いつつ、私は身体を起こしてパソコンを開く。
漫画の世界から飛び出して来たようなビジュアルの配信者さんとわちゃわちゃと遊び回るレオちんの様子に、思わず息を呑む。
その光景は、まるで二次元と三次元がリンクしているようで。
まだまだたくさんの可能性がありそうな配信の世界に、胸がドキドキと高鳴る。
食い入るように画面を眺めていたところで、ピンポーンと玄関でチャイムが鳴った。
こんな時間に宅配便が届く予定はなかったけれど。
警戒しつつドアスコープを覗いた私は、驚いて家のドアを開けた。
何やら両手に大きな紙袋をぶら下げたレオちんは、自分の家でもないのに慣れた様子でずんずんと中へ入って行く。
きょとんとする私達の間に沈黙が流れる。
確かレオちんの誕生日は、もっと先だったはずだけど。
ふとパソコンの画面に表示された日付を見て、私は今日が自分の誕生日であることを思い出した。
ショックを受けた様子のレオちんは、「もう~」とため息をつくと私の両手をぎゅっと握りしめた。
相変わらず私はレオちんの瞳に弱くて、まっすぐに見つめられると何も言えなくなってしまう。
私は握られた両手に視線を落とし、渋々小さく頷いた。
紙袋の中をがさがさと漁るレオちんの姿に、心の中が温かいもので満たされて行く。
一瞬驚いたように瞳を瞬かせたレオちんは、やがてすぐに表情をふわりと緩めた。
ぷうっと頬を膨らませ、仕返しと言わんばかりに距離を詰めるレオちん。
ほどよく日に焼けた指先が私の頬に触れ、くすぐったさで肩が震える。
私の瞳の中を覗き込むように、彼はこちらへ顔を寄せた。
互いの小さな笑い声が混ざり合うと、彼は指先を私の顎へと滑らせる。
少し伏せられた長い睫毛に促されるように、私は静かに目をつぶったのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。