ぼくはハオリさんと別れ、北東の森へひとりで出発した。大きなリュックを背負って歩いていく。
はじめてのひとり旅にドキドキしたけど、「ぼくはぜったいできる!」と自分に言い聞かせて足を前に進めた。
*
しばらく歩くと大きな川に出た。橋がないので、どうしようかと迷っていた。
すると川のほとりに座っていたおじさんが声をかけてきた。ハゲた頭にちょび髭がはえたおじさんだ。
おじさんは立ち上がってニカッと笑った。
近くにあった小さなボートに案内してくれた。
舟に乗せてもらうと、おじさんが話しかけてきた。
少し気になったけれどこれ以上話すと一生続きそうなのでやめた。だが、勝手に話し続けていた。
昔見た大きなドラゴンのこと、怖い魔物の話……どれも本当かどうかは分からないけど楽しかった。
そんなことを話しているうちについた。
お礼を言うとおじさんは手を振りながら去っていった。
*
また歩き出すと道の途中で倒れている女の子を見つけた。ぼくより少し大きい子。十歳くらいだろうか?泣いているようだ。
話しかけると女の子は顔を上げた。
見てみると靴ずれができていて血が出ていた。
どうしよう……
助けてあげたいけど治す方法が分からない。でもほっとくこともできない。
ハオリさんに教わった知識を必死で思い出そうとしていると、ふと思いついた。“自然に力を借りればいい”
周囲を見渡すとそこには薬草(治癒作用のある植物)が生えていた。それを摘んで傷口に当てると少しずつ痛みが和らいだようだ。
女の子は元気を取り戻したようで笑顔を見せてくれた。
なんだか心がぽかぽかした。
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さらに進むと今度は巨大な熊が現れた! 怖くて動けない!
低い唸り声が耳に響く。
どうしよう、どうしよう…
そのとき突然頭の中にハオリさんの声が聞こえた。(落ち着け、ルル。自然に寄り添い、相手の気持ちを感じるんだ)
そうだ! 自然の声を聞いてみよう!
熊に対して念じるように意識を集中させた。するとぼんやりとしたイメージが伝わってきた。
(お腹空いた…辛い…)
ぼくはリュックの中の肉を与えた。
喉を鳴らしながらゆっくり去っていく背中を見送った瞬間、胸の中で何かが弾けたような気がした。
胸がいっぱいになり自然と涙が出てしまうほど嬉しかった。
その後も様々な困難があったけれど勇気を持って乗り越えた。ぼくは"成長してる!"って実感できて幸せだった。
*
そしてついに目的地“精霊の泉”まで辿り着いたときには夕焼け空になっていた。美しい虹色の水面を見下ろしながら深い呼吸をする。
達成感と共に不思議な力を身体中から感じる。これが冒険の成果なのかもしれないと思えて心地よい疲れと共に充実感溢れる時間を過ごしたのである。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!