カチャリ。
遊佐くんは無言のまま、後ろ手で部屋に鍵を掛けた。
突如、塞がれた唇。
眼の前には遊佐くんの長いまつげ。
遊佐くんの唇からジワリと熱が伝わり、頭が真っ白になった 。
真っ白な頭の中でスケベ心たちがわっしょいしながら駆け巡る。
ちゅ…
濡れた音と共に離れた遊佐くんの頬は赤く色づいて、お色気の暴力。
溢れた鼻血がまだ熱の残る唇をたらりとなぞった。
耳に響く低くかすれた声。
でも夢にしては遊佐くんがリアル……。
ほら、お尻だってこんなにーー。
ムニッ
思わず飛び出た言葉にはっとする。
蠱惑的な笑みを浮かべる遊佐くんに顎をすくい上げられる。
彼の潤んだ瞳に私が映る。
そして顔が徐々に近づいて。
ドン!
ドン!
ドン!!!
ドアの向こう側、
弟に呼ばれて渋々退散するヒカル会長。
そんなのどうだっていい。
私の頭の中は“キス”の二文字で埋め尽くされた。
ちゅ!
……は!! 体が勝手に!!
呆れ顔でため息を吐く遊佐くん。
私は独房に入る覚悟を決め、目を閉じた。
気づけば私は彼の腕の中にいた。
身を捩ると更にぎゅっと抱きしめられ、
むぎゅうと遊佐くんの首筋に顔が埋まる。
スケベ心たちは何やら忙しない。
でもそれとは真逆に、遊佐くんの顔は凄く真剣。
スケベ心がじっとこちらを見つめている。
遊佐くんがぐっと顔を近づける。
ドン!
ドン!
ドン!!
遊佐くんが苛立ち半分にドアを開けた途端、モクモクと煙が立ち込める。
まるでオーバーヒートした私の頭の中みたい。
煙と走り回る双子たちで廊下は大惨事。
取り残された私は呆然とただ煙を眺めていた。
パァン!!
煙の中から現れたのは遊佐くんのお尻みたいに
揉みごたえがありそうなセイウチ。
しかし、手にはライフル。
その風貌は、まるでどこかの殺し屋だ。
そう言って、リセイウチはニヒルに笑う。
パァン!!
ライフルの銃声が響く。
リセイウチは私の心臓めがけライフルを構えた。
パァン!
パァン!
パァン!
パァン!
次々と生まれ出るスケベ心達はリセイウチのライフルに撃ち抜かれ、キラキラと消えていく。
徐々に、少しずつ、
私の中からスケベ心が消えていく……。
そしてついに、スケベ心は私の中からいなくなった。
今日から私の脳内は理性の化身、リセイウチのもの。
そう、全ては遊佐くんと真剣に恋をするため。
遊佐くんの清く可愛い彼女になるため。
(END.)
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。