第9話

遊佐家にて緊急スケベ速報!
5,883
2018/11/30 09:00


広いリビング。ふきぬけの天井。
そして足の下にはリアルなトラの絨毯じゅうたん

ソファーはどんな大殿筋より低反発で手触りがいい。


遊佐くんには紅茶でも飲みながら
待っててと言われたけど――


ぐるりと見渡せば首が痛くなるほどリッチな家。
心美
心美
すごい家
思わず声を出してしまい口を塞ぐ。

手に触れた唇がまだ熱くて、屋上でのキスを
思い出した。


心美
心美
(遊佐くんは、からかっただけなのかな……。でも、嫌じゃなかった)

ヒカル会長はおでこでも不快だったのに……。
どうしてだろう。
心美
心美
あ! 
そっか、遊佐くんはキスが上手いんだ!
遊佐
遊佐
そう?
心美
心美
わーーー!! 
戻ってきたなら声かけてよ
遊佐
遊佐
お前、なんか考え込んでたから
悪いかなと思って
心美
心美
な、何も考えてないよ!

ごまかすように紅茶を飲む。
でも遊佐くんにはすべてお見通しのようだ。

心美
心美
あのー……
遊佐くんの言ってた、いいところって
遊佐
遊佐
そ。俺ん家
心美
心美
なんで?
遊佐
遊佐
今日、親いないんだ
心美
心美
え?(あれ、今スケベ女子にはたまらないセリフNO.1が聞こえたような……)
心美
心美
ごめん、今なんて?
遊佐
遊佐
今日さ
俺の親、帰ってこないんだ


遊佐くんの蠱惑こわく的な笑みはスケベ心を呼び覚ました。

スケベ心
スケベ心
緊急スケベ速報!緊急スケベ速報!
心美
心美
(ままま待って!これは、あの伝説の
スケベ展開?!)
スケベ心
スケベ心
赤飯!! 至急、赤飯を準備せよ!!
心美
心美
(え、さすがに急すぎない?!
心が追いつかないよ!!)

遊佐くんは私の隣に座る。

ソファーが揺れ、遊佐くんの重みを真横に感じる。
心美
心美
(み、右肩が熱い!)
遊佐
遊佐
親がいないってことは……

私を覗き込む遊佐くんの顔はやっぱり整っていて
直視出来ない。
心美
心美
遊佐くん、ちょっと――
遊佐
遊佐
目、閉じろ

有無を言わせない声色に、思わず目を閉じてしまう。

心美
心美
(なにしてんの私!チョロすぎ! 
このままじゃセカンドキスが!)

パチンッとおでこに小さな痛み。

心美
心美
イタッ!!
遊佐
遊佐
ぷっ!アハハ!
ほんと考えてること顔に出過ぎ!
心美
心美
ちょっと!またからかったの?!
遊佐
遊佐
てか、男の家にほいほいついてくんなよ
危なっかしい
心美
心美
遊佐くんが強引に連れてきたんじゃん!
遊佐
遊佐
俺はいいんだよ
心美
心美
理不尽……

頭の中のスケベ心が残念そうに撤収作業を始めた。



すると、なにやら元気な声と足音が玄関から近づいてくる。


勢いよく扉から飛び込んできたのは、遊佐くんとそっくりな美形の双子小学生。
陸
お兄、ただいまー!!
渚
ただいまー!!
遊佐
遊佐
陸、渚、おかえり!!

ぱっと笑顔になった遊佐くんは二人を抱きとめた。
優しい顔つきに思わず微笑んでしまう。

陸
お兄、この人だれ?
渚
だれ?
心美
心美
お邪魔してます
私、助平心美っていうの。よろしくね?
陸
すけひら?
渚
あ、知ってる
それすけべえって書くんだよ
陸
スケベぇ!!

遊佐くんとそっくりな美形二人がニヤリと笑う。
それはまるで小さな悪魔だ。


私の周りをくるくると回りながら悪魔達はあの忌まわしき"すけべぇコール"を始めた。
陸
すけべぇ!!すけべぇ!!すけべぇ!!
渚
すけべぇ!!すけべぇ!!すけべぇ!!

小学生のトラウマが蘇り、鼻血がたらりと垂れた。

心美
心美
(そういえば……あの頃から鼻血がでるようになったんだっけ)

涙目になりながら鼻の血管の弱さを思い知る。
遊佐
遊佐
こーら!! 陸、渚やめろ!!

大声で怒られた双子は急に静かになる。
心美
心美
遊佐くん……ありが
遊佐
遊佐
こいつをすけべぇって呼んでいいのは
俺だけだ!

違う。遊佐くんもだめ!


そう言おうと思ったその時――


翔
おんなのこにそんなこといっちゃダメ!
にいちゃ!



振り返ると、これまた美形で愛らしい幼稚園児がハンカチを差し出していた。



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