第4話

遊佐くんは理想のセクシー男子
6,734
2018/10/26 09:00


5月も後半、今日は球技大会。
私にとっては立派なスケベ行事だ。


光る汗! ボールを追って走る男子の脚、脚、脚!

ビバ筋肉!


紗季
紗季
ちょっと心美!
最近すーぐどっか行っちゃうんだから!
心美
心美
うわっ!びっくりしたーーー!!
紗季
紗季
あ、男子バスケー?って隣のクラス? 
ははーん。見てたんだ?
心美
心美
べ、べつに私は遊佐くんなんてっ
紗季
紗季
は?遊佐?! ヒカルくんじゃなくて?
心美
心美
え? あ、そう!そうだよ!
ヒカルくん!

あの日から私の頭は遊佐くんでいっぱい。


登校中も、授業中も、お昼休みも、常にあの日のスケベストショットを繰り返し上映中だ。

紗季
紗季
ね、もっと近くで応援しようよ!
心美
心美
え! ちょっと!


ボス!  

ピーーーー!

軽やかなフォームでシュートを決めたヒカル会長。

紗季
紗季
キャーーー! 
ヒカルくんナイシューー!
心美
心美
(うわ! キラッキラ。爽やかを擬人化したらあんな感じ?)

その時


ボールを奪った遊佐くんが目の前を走り、風が私の前髪を揺らした。
心美
心美
(わ、遊佐くんっていい匂い。天国のお花畑みたい。なんか、胸がドキドキする)
心美
心美
(違う違う……これはきっと、ドリブルの振動のせい)


いつもぴっちりとシャツインしている体操着は遊佐くんの動きとともに乱れる。


紗季
紗季
ちょっとメガネキノコ! 
ヒカルくんにボール回しなさいよ!
心美
心美
(か……かっこいい。遊佐くんっていつもは猫背だけど、本当は背が高いんだ)

勢いよくゴールへとジャンプする遊佐くん。
心美
心美
(あ、あれは!)
スケベ心
スケベ心
腹チラチャーーーンス!!


私のスケベ心が騒ぎ出す。
世界はスローモーション、目は遊佐くんに釘付け。

ダンクシュートを決める途中、ふわりと体操着が空気を含む。


チラリ。
スケベ心
スケベ心
わっしょーーーい!
心美
心美
(あ、あれは黒のボクサーパンツ ?!
ダサ男子が上級者向けの黒ボクサー? 
ギャップ!ギャップで胸が痛い!!)
紗季
紗季
うわっ、遊佐のやつシュート決めちゃったよー
心美
心美
「(しかも何?あの鍛えられた腹筋!
 うっすらだけど、割れてたよね?!
え? え? 遊佐くんってとんでもなくセクシーなカラダしてない?! あぁ! 鼻血がでそう!)
紗季
紗季
心美危ない!
心美
心美
え、

ドゴッ!!


視界は暗転し、後頭部に鈍い痛み。
そして鼻血の滲む感覚。


その後は記憶がない。




ーーーーーーーーーーーー




天国の夢を見た。

ゆらゆらと大きくて広い背中が私を運ぶ。
お父さんと、お母さん、それから幼い私。


なにもかもが幸せな、そんな夢。
心美
心美
……あ、あれ。 ここ……
ヒカル
ヒカル
保健室だよ。起きた?
心美
心美
ひ?! ヒカル会長?!
ヒカル
ヒカル
ゴメンね? 
バスケのボール当てちゃったの僕なんだ
心美
心美
あ、そっか、私ボールに当たって……
もしかして、ここまで運んでくれたんですか?
ヒカル
ヒカル
え!? あ、あぁ。
こんなに可愛い顔傷つけるなんて、どう償っていいか……

優しく、頬をふわりと撫でられる。

心美
心美
いや、運んでくれたので十分です! 
あんな場所にいた私も悪いので!
ヒカル
ヒカル
心美ちゃん?だっけ。 
遊佐くんとは、仲いいの?
心美
心美
え? 別に、そこまでは……
ヒカル
ヒカル
なーんだ! 良かった! 
じゃあさ、僕と仲良くしてよ!
心美
心美
え?
ヒカル
ヒカル
これからよろしくね、心美ちゃん!



ちゅ。



おでこに柔らかい感触。後に残るかすかな温度。


上機嫌のヒカル会長は手を振りながら保健室を出ていった。
心美
心美
(キス……された?)
心美
心美
…え、な、なんでキスしたの? 
おでこの、おでこのファーストキスだったのにいいぃぃぃ!!!

涙目になりながらふと目をやると、枕元には見覚えのあるポケットティッシュ。

心美
心美
変なヒーローキャラクター……
これ、遊佐くんの?




私はすかさずそのティッシュでおでこを拭いた。






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