5月も後半、今日は球技大会。
私にとっては立派なスケベ行事だ。
光る汗! ボールを追って走る男子の脚、脚、脚!
ビバ筋肉!
あの日から私の頭は遊佐くんでいっぱい。
登校中も、授業中も、お昼休みも、常にあの日のスケベストショットを繰り返し上映中だ。
ボス!
ピーーーー!
軽やかなフォームでシュートを決めたヒカル会長。
その時
ボールを奪った遊佐くんが目の前を走り、風が私の前髪を揺らした。
いつもぴっちりとシャツインしている体操着は遊佐くんの動きとともに乱れる。
勢いよくゴールへとジャンプする遊佐くん。
私のスケベ心が騒ぎ出す。
世界はスローモーション、目は遊佐くんに釘付け。
ダンクシュートを決める途中、ふわりと体操着が空気を含む。
チラリ。
ドゴッ!!
視界は暗転し、後頭部に鈍い痛み。
そして鼻血の滲む感覚。
その後は記憶がない。
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天国の夢を見た。
ゆらゆらと大きくて広い背中が私を運ぶ。
お父さんと、お母さん、それから幼い私。
なにもかもが幸せな、そんな夢。
優しく、頬をふわりと撫でられる。
ちゅ。
おでこに柔らかい感触。後に残るかすかな温度。
上機嫌のヒカル会長は手を振りながら保健室を出ていった。
涙目になりながらふと目をやると、枕元には見覚えのあるポケットティッシュ。
私はすかさずそのティッシュでおでこを拭いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!