息が止まるかと思った。
近すぎる距離と、まっすぐこちらを見つめる遊佐くんの瞳に囚われていた。
遊佐くんはすっと私から離れ、
取り込まれた洗濯物を指差した。
って、待って。 そんなことより!
すると部屋の中から子どもたちの
大きな歓声が上がる。
みんな大画面の4Kテレビに夢中だ。
男性用下着のCM、
それは何度も見たことのあるritoのお尻だ。
私が見間違えるはずのないお尻。
叫んだせいで子どもたちが振り返った。
遊佐くんは私を見て、
面倒が増えたと言わんばかりに眉間を抑える。
騒ぎ出すスケベ心とともに、私の息も上がる。
そして自然と目線は遊佐くんのお尻へ――。
お尻音頭でスケベ心達が輪になって踊りだす。
お祭り騒ぎの脳内はお尻のことでいっぱいだ。
大きな手で口を抑えられ、
今までにないくらいの満面の笑みを向けられる。
子どもたちは興味津々でこちらを見ている。
口から手を離した遊佐くんは、
言ってみろと首をかしげる。
楽しそうに笑った遊佐くんは私の額を
コツンとこづいて―――。
そう耳元で囁いた。
ドキドキドキ…
話ってなんだろう。
ドキドキドキ………
この後が気になって、せっかくの晩御飯は味わえず、気がつけば遊佐くんの部屋にいた。
洗練された上品な家具、遊佐くんのクッション、
ハンガーにかかる遊佐くんの脱いだ制服、そして部屋中に香る遊佐くんの匂い!!
目一杯吸い込んで、はっと我に返る。
この部屋は誘惑だらけだ!!
それなのに、かれこれ10分程一人で待たされている。
そして一番気になるのは部屋のど真ん中に置いてある大きなベッド。
ごくり。
出てこようとするスケベ心をひたすら
抑え込むのも限界だ。
とりあえず部屋の隅っこに移動する。
ドアの隙間から覗いていた遊佐くんが
残念そうに部屋に入ってくる。
そう言って遊佐くんは広いベッドを指さした。
怒ったような口調で私に詰め寄る遊佐くん。
強引に私の手首を掴み、その手をあろうことか彼のお尻へと持っていく。
むぎゅ。
鍛えられた筋肉の弾力と引き締まった丸み。
手のひらから伝わる情報の処理が追いつかず、
鼻血がどばっと溢れ出した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!