第23話

恋する心美と焦げたおかゆ
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2019/03/08 10:05


恋、そうか。これって恋だったんだ。


自分でも分からなかった感情は、“恋”と名付けるとしっくりきた。

まるでパズルのピースがピタリとはまったみたい。

遊佐くんのことを考えるだけで、胸がざわついて
居ても立ってもいられない。
スケベ心
スケベ心
わっしょー……ってあれ?
出番じゃない?
スケべ心
スケべ心
なんだ…ガッカリだ

胸のざわつきに反応したすけべ心たちは、しょんぼりと退散していく。
心美
心美
(おかゆ、少し焦げちゃった……)

遊佐くんにあーんする妄想をしていたら、
このアリサマだ。

恋とは時間をも奪う恐ろしいものかもしれない。


心美
心美
遊佐くん? おかゆできたよ

ノックをしようとしたら突然、謎の緊張が私を襲う。
心美
心美
(あれ?よく考えたら今、遊佐くんの部屋に入ろうとしてる?!今からおかゆ、あーーんしに行くの?!)


ドキドキと高鳴る鼓動を抑え、そっと部屋に入ると、遊佐くんは苦しそうに寝息を立てていた。
遊佐
遊佐
……う、……ごめん、ごめ、……ん

遊佐くんは悪い夢でも見てるのだろう。
しきりに誰かに謝っている。
遊佐
遊佐
す、き……だ…
心美
心美
え?!
心美
心美
(今、好きって言った?)

遊佐くんの口からでた唐突な“好き”にドクリと鼓動が音をたて、頬が熱を持つ。
心美
心美
(落ち着いて私、今のはそう聞こえただけ。好きって言ったとしても私じゃない、きっとイズミさん……)

自分で言い聞かせた言葉に勝手に傷ついてしまう。

ぼーっとその場に突っ立っていたら遊佐くんがうめき声をあげた。

慌てておかゆをそっとサイドテーブルに置く。
遊佐
遊佐
……んん
心美
心美
大丈夫?

急いで苦しそうな遊佐くんの汗を拭いてあげる。

とその時、

手首をぐっと引かれ遊佐くんが目を覚ます。
遊佐
遊佐
好きだ
心美
心美
え?
スケベ心
スケベ心
え?!




ドクリ…



心臓が、止まった。

スケベ心たちも驚いて固まっている。
遊佐
遊佐
……ん? あれ
なんだお前。まだいたのか
心美
心美
…………
遊佐
遊佐
おい、聞いてんのか?
心美
心美
うわああああ!!

盛大に尻もちをついた私を見て、遊佐くんは何やってんだよとため息を吐く。
心美
心美
あれ、さっき……好きって…
遊佐
遊佐
は?……え?!
夢じゃ………あー、、

遊佐くんは焦ったようにうろたえ、私から気まずそうに目を逸らす。
遊佐
遊佐
夢、見てたんだよ
心美
心美
夢……?
遊佐
遊佐
俺がガキの頃、好きだった奴の夢
心美
心美
へ、へぇ
すごくうなされてたけど……
遊佐
遊佐
ああ、ずっと後悔してんだ
心美
心美
後悔?
あ、もしかしてフられたとか?
遊佐
遊佐
いや、そこまでいってねえ
すげえ好きだったのに、俺そいつのこといじめたんだ
心美
心美
え……
遊佐
遊佐
あるだろ、好きなやつほど
いじめたくなるってやつ
心美
心美
ないけど
遊佐
遊佐
あんだよ!
とにかく、俺はまだガキで
加減がわかんなくて……傷つけた
遊佐
遊佐
本当に申し訳ないと思ってる

じっとこちらを見つめる遊佐くんの熱っぽい目。

そんなに見つめられると、なんだか私に
謝ってるみたい……。
遊佐
遊佐
もし、いじめられてた奴に
好きだって言われたらどうする?
心美
心美
そ、それは……
遊佐
遊佐
そいつのこと、許せんのか?
心美
心美
(もちろん、いじめはダメ。実際、私もあんなすけべぇ生活はもう嫌だ)

でも、りっくんが遊佐くんなら……。
私はーー。
心美
心美
(遊佐くんの言う好きな子って、もしかして私?遊佐くんはやっぱり、りっくんなの?)

微かな期待を胸に遊佐くんに問う。
心美
心美
ねぇ。それって、
ど、どんな子だったの?
スケベ心
スケベ心
ゴクリ……

スケベ心も固唾をのんで見守っている。









遊佐
遊佐
お前とは全然ちがう


ズガーーーーーーーン




まるで雷にでも打たれたかのような衝撃。

心美、撃沈。
心美
心美
(なんだ、なんだ……やっぱりイズミさんのことだ…)

恋は痛みを伴う。そのとおりだ。
ジクジクと胸を蝕むような痛み。

遊佐くんの口から好きな子の話なんて、嫌だ。
心美
心美
(イズミさん、綺麗だもん……目なんかぱっちりしてて)
遊佐
遊佐
お前、結構変わったからな……
前よりもっと、いや、俺なに言ってんだ
心美
心美
(それに私と違って色気があって、ずっとずっとお似合いでっーー)
心美
心美
あれ? 何か言った?
遊佐
遊佐
なんでもねえよ!
それよりおかゆ、お前が作ったのか
心美
心美
……うん
遊佐
遊佐
食わせろ

相変わらずわがままドSの遊佐くんにおかゆを掬って差し出す。


スプーンの上、黒く焦げ付いたおかゆを見ると
なんだか凄く惨めな気分。

念願のあーんを前に、なぜだかじわりと涙が滲んだ。
心美
心美
ごめん、自分で食べて!
遊佐
遊佐
むぐ……!

遊佐くんの口におかゆをつっこみ、私はそのまま部屋から飛び出した。

遊佐
遊佐
お、おい!!

涙なんか見られたくない。

でもそれより、もうこれ以上好きな子の話なんか聞きたくない……。







遊佐
遊佐
って苦っ!
おかゆ、焦げてんじゃねえか……

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