第16話

心美危機一髪! スケベ警戒レベルMAX
4,899
2019/01/18 09:45


覆いかぶさるヒカル会長は、何を考えているか全く分からない。


腕を押さえつけられ動けない私の頭には、
緊急スケベ警報が鳴り響く。
スケベ心
スケベ心
警戒レベル3!! 警戒レベル4!!
心美
心美
ど、どうして知ってるの? 
……私がスケベだってこと
ヒカル
ヒカル
この前屋上で見ちゃったんだよね
アイツ、遊佐理人と話してるとこ

そう言って会長はゆっくりと顔を近づけてくる。
スケベ心
スケベ心
警戒レベル5!! 警戒レベルMAXを
記録しました!!
心美
心美
(やだ! 逃げられない!!)
心美
心美
た……助けて、遊佐くん!!

無意識に彼の名を叫んだ瞬間、会長の顔が歪む。


そして彼は私の首に手をかけた。
ヒカル
ヒカル
なんで、なんでいつもアイツなんだ!
みんなアイツを好きになる!!


ギリギリと絞まる首。頭に血が溜まるのを感じる。
ヒカル
ヒカル
僕はいつだって理人には敵わないんだ…
心美
心美
ぅぐ!(く、苦しい……!!)

更に強く絞められ、息ができない。

頭に溜まった血が行き場をなくし、鼻から噴水のように吹き出した。
ヒカル
ヒカル
うわっ!!

突然の鼻血に驚いたのか、ヒカル会長は私の上から飛び退く。

ヒカル
ヒカル
え?血?!だ、大丈夫? 
ど、どどどうしよう

さっきまで首を絞めていたヒカル会長はどこへやら、慌てて彼は自分の制服の袖で鼻血を拭う。
心美
心美
……はぁ、はぁ。
あの、これはいつものことなんで、
そんなに心配しなくても……
ヒカル
ヒカル
……君は本当、
いつも僕の予想の範疇を超えてくるね


ヒカル会長は顔を両手で覆い、大きく息を吐いた。




ヒカル
ヒカル
あーあ。君には全部バレちゃったし……
じゃあ早速、取引きしようか

そう言って顔を上げた会長は
また感情の読めない無表情へと戻っていた。
心美
心美
取引……?
ヒカル
ヒカル
そ、簡単なことだよ
僕は君がスケベだってことを黙ってる
ヒカル
ヒカル
その代わりに遊佐理人の弱みを教えてくれないかな?
心美
心美
……どうして
ヒカル
ヒカル
憎いからだよ! アイツは僕の持ってないものを全部持ってる
ヒカル
ヒカル
生まれた時からお互い比べられて、
僕はお兄ちゃんだから我慢しろって――
心美
心美
え、ちょ、ちょっと待ってお兄ちゃん?
ヒカル
ヒカル
そうだよ
僕たちは兄弟だよ。それも双子のね
心美
心美
え、ええぇぇぇ――?!!

そんなことって……


ヒカル会長と遊佐くん。

なんとなく面影が似ているような気も、うーん。
ヒカル
ヒカル
正直あんまり似てないでしょ
二卵性双生児だからね
心美
心美
でも苗字が違っ………あ、
ヒカル
ヒカル
心美ちゃん知ってるんだ? そ。僕だけが離婚して一人きりの母さんについてったんだ。だから母方の姓なんだ
心美
心美
そ、そうだったんですね……
ヒカル
ヒカル
とにかく、君なら知ってるでしょ? 
理人の弱み

頭に浮かぶのは遊佐くんとイズミさんが抱き合う姿。
心美
心美
(きっと遊佐くんの弱みは
初恋のイズミさん……でも)
心美
心美
弱みなんて知らないです
ヒカル
ヒカル
へぇ~、そうなんだ。
じゃあ早速バラしちゃおっか、
君がスケベだってこと
心美
心美
それはっ


じりじりと距離を詰めてくる会長。

ヒカル
ヒカル
ほら僕の追っかけ、ヒカル守り隊? 
あの子達に先に言っちゃう?
心美
心美
いやっ
ヒカル
ヒカル
みんなの前で君に話しかけたのだって、わざとだよ。さすが空っぽの偶像を追いかけるメス猿ども
ヒカル
ヒカル
まんまと君を無視するんだもん、
ほんと笑っちゃう
心美
心美
ぐ、偶像? 今までの全部?
ヒカル
ヒカル
当たり前じゃん。キラキラ笑顔、優しい言葉、全部中学の頃の理人のマネだよ。僕の彼女を奪った頃のアイツの、ね
心美
心美
……え? 奪ったって――

にじり寄る会長は混乱する私の腕を引いた。


あまりに強い力で引かれ、ヒカル会長の上に倒れこむように覆いかぶさってしまう。




パシャ。






フラッシュに目を逸らす。
会長はスマホで写真を撮っていた。


それはまるでスケベな私が会長を押し倒しているような一枚で――。

ヒカル
ヒカル
証拠写真ありがと。今月の校内新聞の
一面はこの写真で飾ろうかな
心美
心美
卑怯ですよ! 消して下さい!!
ヒカル
ヒカル
ならアイツの弱みを教えてよ。
勉強も運動も僕に勝って、おまけに弟たちにも慕われてる。一つくらい僕が勝ったって
いいわけない。いくらなんでもこんなやり方。



頭にきた私は、おもむろにヒカル会長の制服に手をかける。







ブチブチブチ……。

ヒカル
ヒカル
……え? あ、ちょっ!


戸惑うヒカル会長を無視し、
私は彼のシャツをボタンごと引きちぎった。

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