第15話

光の裏には影がある
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2019/01/11 10:24



遊佐くんの背に絡みつくイズミさんの腕。

そのまま彼女は遊佐くんの首筋に唇を寄せる。


ふとイズミさんと目が合った。
イズミ
イズミ
私のものよ

口パクでそう言って彼女は挑発的な笑みを浮かべた。
心美
心美
(恥ずかしい。情けない。早く同じ下着を脱ぎたい!)

私はいてもたってもいられなくなって、 スタジオから
逃げ出した。
心美
心美
(あんな二人、これ以上見たくない!)
私を呼ぶ遊佐くんの声が遠くに聞こえた気がした。







翌日の登校は、それはもう憂鬱だった。
心美
心美
ねぇ! みんな、ちょっと話が……
千春
見てみてヒカル君来たよ!!
ほんっと、大人っぽいよね
真奈
それー。1年から生徒会長やってるから
タメなのにキョリある感じ
心美
心美
ね、ねえさっちょん!
紗季
紗季
ヒカルくんはそこがいいんじゃない

当たり前のように空気扱いの私。
さっちょんは話しかける隙すら与えてくれない。


今日もダメか、と思わずうつむいた。
ヒカル
ヒカル
あれ、元気ない? なんかあった?

突然キラキラオーラ全開で顔を覗き込んできたのは
ヒカル会長。

会長を取り囲むヒカル守り隊の花道。

あろうことか彼は私の前で立ち止まった。
心美
心美
(ひぃ!! よりによってさっちょんの前で話しかけないで!!)

さっきまでは見向きもしなかったさっちょんの目線が刺すように痛い。


それを見て何かを察したヒカル会長が私の手を取って
走り出した。
ヒカル
ヒカル
こっち!走って!
心美
心美
え?! 待って!

意外と強い腕を掴む力。振り払うことができない。
紗季
紗季
なんで心美ばっかなのよ!!

遠くでさっちょんの叫び声が聞こえた。










連れてこられたのは誰もいない生徒会室。
心美
心美
なんで、こんなこと
ヒカル
ヒカル
だって心美ちゃん困ってたから……
心美
心美
(大体はヒカル会長のせいなんだ
けど……。これじゃ逆効果だよ)

ふと窓の外に目をやると、遊佐くんが見えた。
イズミさんと抱き合う光景がフラッシュバックする。



胸の痛みとモヤモヤを鎮めるため、慌ててカーテン
を閉めた。

すると突然、ヒカル会長が後ろから私をぎゅっと抱きしめる。
心美
心美
え?
ヒカル
ヒカル
今、心美ちゃん
すごく悲しそうな顔した……
スケベ心
スケベ心
…………

背中に優しい温度を感じる。
でもスケベ心は騒がない。
心美
心美
(やっぱり、遊佐くんじゃなきゃ
ダメなんだ……)

振り返るとヒカル会長は慌てて離れる。

そして改まった様子で頭を下げた。
ヒカル
ヒカル
ごめん心美ちゃん!! 
僕のせいで女子から避けられてるよね?
心美
心美
……え
ヒカル
ヒカル
薄々気づいてたんだ
ここに連れてきたのは謝るためだった

顔を上げたヒカル会長は申し訳なさそうな顔で
ふわりと私の頬を撫でた。
ヒカル
ヒカル
君を悩ませた。本当に、ごめんね
今まで見たことのない真剣な顔。
潤んだ瞳はなんだかすごく真っ直ぐだった。
ヒカル
ヒカル
でも……心美ちゃん、それ以外にまだ
悩みがあるんじゃない?
心美
心美
どうしてそう思うの?

ヒカル会長はちらりとカーテンの方に目線を向けた。
ヒカル
ヒカル
僕も、そうだったから
会長の顔が少し苦しそうに歪む。
ヒカル
ヒカル
まあ僕の場合は悩みを溜め込み過ぎて、
最後には爆発しちゃったんだけどね
震える手を握りしめる会長は触れたら
消えてしまいそう。
ヒカル
ヒカル
だから辛いことは
誰かに話したほうがいいよ

力なく笑う彼の目は涙で潤んでいた。


ヒカル会長のこと、少し誤解してたのかもしれない。
心美
心美
じゃあ、少しだけ話聞いてくれますか?
ヒカル
ヒカル
いいよ

そう言って会長はおもむろにドアの方へと歩く。
ヒカル
ヒカル
なーんてね


ガチャリ……。



ヒカル会長はドアの鍵をかけた。
心美
心美
な、なんでカギかけるんですか?
ヒカル
ヒカル
ぷっ! あっははは!! 
本当に君はおバカさんなんだね
おかしくて笑っちゃう
突然お腹を抱えて笑い出す会長。
ヒカル
ヒカル
笑い堪えるのってこんなに難しいっけ?
ムリ、腹痛い!
心美
心美
うそ……今までの全部演技なの?
ただならぬ雰囲気に逃げ出そうとドアに駆け寄る。

しかしカギは開かない。



すると強い力で腕を引かれ、床に押し倒される。


覆いかぶさった会長は怖いくらいの無表情で
私を見下ろした。



ヒカル
ヒカル
ねぇ、心美ちゃん
君ってすっごくスケベなんだって?

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