わざとらしく咳払いをすると、理久はきょとんと小首を傾げた。
小動物みたいっていうのは、こういう人を言うんだろう。
また顔が赤くなっていくのを感じて、彼に見られないようそっぽを向く。
思わず間抜けな声が飛び出る私に、理久は珍しくにやけて笑った。
むっ、後輩の癖に先輩に偉そうにしちゃって……そんなことを思いキッと睨んで見せると、慌てて理久は真面目な顔を取り繕うも口の端のにやけは残っている。
ちょ、ちょっと待ってくれ。
私が思うよりずっと理久は賢かった……最初から千裕の嘘になんて踊らされてなかったってこと___?
つまり一番嘘に踊らされていたのは……私!?
恥ずかしい、恥ずかしい。穴があったら入りたい……
そんな私を見て、理久はくすくすと笑う。
美少女顔に似合わない、硬めの手が私の頭に伸びる。
理久の温もりを直に感じて、ようやく自分の顔が真っ赤だったことに気付いた。
…照れ隠し代わりにお粥を差し出す。
スプーンにピンクの唇が寄ってくる。
不思議そうな顔をする理久。これはもしや食べさせてほしい…ってこと?
自分の中の羞恥心が邪魔をする。
思わず目を逸らし、そのままスプーンを彼の顔に近付けるもそれは当たらなかった。
色白の指が私の顎に触れる。くいっと寄せられたかと思うと、次の瞬間には端正な顔が目の前にあった。
柔らかい感触。…これは理久の唇?
息が苦しくなってきた頃、理久がやっと唇を離す。
二人を紡ぐ銀の糸がぷつりと切れ、その時初めて自分が彼とキスをしたのだと実感が押し寄せてきた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。