前の景色に戻り、ドラムロールを聞いて、視界が一転。
もはや慣れてしまった。
瞼を開けば、そこは雲の上。
月が、とても近かった。
久しぶりに見る月に見とれていると、恐る恐るといった様子で肩を叩かれた。
丁寧な言葉遣い、何より整った顔が目の前にあると少し緊張してしまう。
すぐ目の前にあるからか、彼からは「綺麗な月」を感じた。
そう言った後、私にもう用はないのか、はたまた月がものすごく好きなのか。
那月くんは、真隣に腰掛けて月を食い入るように眺めている。
さらさらと、長めの髪を揺らしながら。
他の二人より素っ気ない。
けど、不思議と心地いい。
さて、一人を選ぶなんて私には出来るのか…?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!