第116話

No. 1の肩書き
75
2023/10/11 07:38



 翌日。



 雄英高校の会議室では重苦しい空気が立ち込めていた。


根津校長
ヴィランとの戦闘に備えるための合宿で襲来……
根津校長
恥を承知で宣おう
根津校長
ヴィラン活性化の恐れ……という我々の認識が甘すぎた
根津校長
奴らはすでに戦争を始めていた
根津校長
ヒーロー社会を壊す戦争をさ

ミッドナイト
認識できていたとしても防げていたかどうか……
ミッドナイト
これほど執拗で矢継ぎ早な展開……
ミッドナイト
オールマイト以降、組織だった犯罪はほぼ淘汰されていましたからね
プレゼントマイク
要は知らず知らずのうちに平和ボケしてたんだ、俺ら
プレゼントマイク
備える時間があるっつう認識だった時点で
オールマイト
己の不甲斐なさに心底腹が立つ
オールマイト
彼らが必死で戦っていた頃、私は半身浴に興じていた……
スナイプ
襲撃直後に体育祭を行うなど、今までの屈さぬ姿勢はもう取れません
スナイプ
生徒の拉致……雄英最大の失態だ
スナイプ
奴らは龍橋と同時に我々ヒーローの信頼も奪ったんだ

根津校長
現にメディアは雄英の非難で持ちきりさ
根津校長
彼女がヒーローということが唯一の救いだね



 もし、爆豪が攫われていたのなら、門の前で声を張り上げるメディアはもっと増えていたはずだ。


根津校長
だが、もしヴィランに龍橋くんが懐柔されたのなら、教育機関としての雄英はおしまいだ



 いつもの陽気な声をひそめ、プレゼントマイクは暗い声を上げた。


プレゼントマイク
信頼云々てことでこの際言わせてもらうがよ。今回で決定的になったぜ
プレゼントマイク
……いるだろ、内通者



 その言葉に教師陣はハッと声を上げた。


プレゼントマイク
合宿先は教師陣とプッシーキャッツしか知らなかった
プレゼントマイク
怪しいのはこれだけじゃねぇ!
プレゼントマイク
携帯の位置情報なり使えば、生徒にだって……



 暗い方向に進んでいくマイクの声を遮るように、ミッドナイトは声を上げた。


ミッドナイト
マイク、やめてよ!
プレゼントマイク
やめてたまるか!洗おうぜ、徹底的に!
スナイプ
そういうお前は、自分が100%シロという証拠を出せるか?
スナイプ
ここのものをシロだと断言できるか?
プレゼントマイク
……



 スナイプに言われ、マイクは声を萎めていく。


スナイプ
お互い疑心暗鬼になり、内側から崩壊していく
スナイプ
内通者探しは焦って行うべきじゃない


根津校長
少なくとも私は君たちを信頼している
根津校長
その私がシロだとも証明しきれないわけだが、とりあえず学校として行わなければならないのは生徒の安全保障さ
根津校長
内通者の件も踏まえ、かねてより考えていたことがあるんだ
根津校長
それは……「デンワガキター!デンワガキター!」



 根津がその案について話し始めようとした時、会議に不似合いな音が鳴った。


オールマイト
すみません、電話が……



 オールマイトは携帯を手に持ち、そう言った。



 先程のは着信音だ。


プレゼントマイク
会議中っすよ、電源切っときましょうよ
ミッドナイト
着信音ださっ……



 オールマイトはそういうマイクたちに頭を下げながら、会議室を後にした。



 ガラガラガラ……。


オールマイト
はぁ……



 会議室外の廊下でオールマイトは大きなため息をついた。


オールマイト
教え子すら守れず、何が平和の象徴だ……!



 力強く握った拳には、その悔しさが前面に現れていた。


初祖龍
初祖龍
全く、ホント〜にバカだよね〜
オールマイト
ッッ、!、!?……初祖、少年?



 隣にいつのまにか立っていたのは、チーム龍のリーダーであり、今回さらわれた龍橋の兄である、初祖龍だった。


初祖龍
初祖龍
やぁ、オールマイト
2人だけで話せる場所に移動しない?
初祖龍
初祖龍
君と取引したいんだ



 薄らと笑う彼は、これから起こる未来を楽しそうにしていた。




 オールマイトサイド



 根津校長にしばらく席を外すと言ってから、初祖少年を仮眠室に連れていった。



 使用中という札を下げ、誰も入ってこないようにした。



 そして、初祖少年の対面に座り、始終ニコニコと笑みを浮かべる初祖少年に不気味さを感じながら、話を促した。


初祖龍
初祖龍
息災かな、傷は大丈夫?



 体の傷のことを心配しているのだろうか、その言葉に私は大丈夫だと返した。



 すると、初祖くんは呆れたような顔になった。


初祖龍
初祖龍
そっちじゃないよ、オールマイト
初祖龍
初祖龍
俺が聞きたいのは、心の傷だ



 そう言われてドキッと心臓が強く跳ねた。


初祖龍
初祖龍
どーせ、正義感の強い君だ
生徒を守れなかったと自分に腹が立っていたでしょ?



 図星の言葉に私は肯定した。


初祖龍
初祖龍
だろうね、まぁ俺は君を責めているわけじゃない
初祖龍
初祖龍
君はその場にいなかった。手が届く範囲じゃなかった。仕方のないことだ



 それを仕方ないことだと言っていいのだろうか。教え子も守れなかった私を……。


初祖龍
初祖龍
対して俺は、手が届く範囲にいた



 その声にハッと顔を上げた。


初祖龍
初祖龍
俺の能力は世界中に手が届く
それに比べて、日本内の距離なら片手間でも可能だ



 その彼の言葉に、私は一つの可能性を思いついた。


オールマイト
もしかして、わざと彼女を助けなかったのか……!?


初祖龍
初祖龍
そう、俺はその時彼女を救うつもりなど毛頭もなかった
初祖龍
初祖龍
俺に必要なのは、もっと強い駒だ


初祖龍
初祖龍
ヴィラン如きに拐われるような奴はいらない



 そう言われ、私は思わず初祖少年の胸ぐらを掴みそうになった。



 妹を弱い駒だと判断して、それを簡単にポイっと放り投げた気楽さに怒りそうだった。



 それじゃあ、何のために彼女は捨てられたのだろうか。


初祖龍
初祖龍
簡単だよ、俺の足にしがみついた愚か者の処理のためだよ
オールマイト
愚か者……?



 愚か者の意味がわからず、思わず聞き返した。



 彼にとっても私は愚か者だろうが……。


初祖龍
初祖龍
君もよぉく知ってるはずだよ、No. 1



 焦らすようにいうその声に速く促すように言うと、落ち着いてよ、と子供っぽい声で言った。







初祖龍
初祖龍
愚か者、それはオールフォーワンのことだ



 口が空いたまま塞がらなかった。



 超常黎明期で悪の象徴と畏怖され、都市伝説になった人物を愚か者……?


初祖龍
初祖龍
彼の全盛期、超常黎明期で俺は彼と戦ったことがあるんだよ。とあるゲームでね



 超常黎明期……!?なぜ、彼がその時代にいるのか?150年前の話だぞ!


初祖龍
初祖龍
勿論、俺が勝ったよ
弱っちぃね、象徴って



 いやぁ、本当に雑魚だったや、と友達と遊んだような感覚で言う彼に、もはや驚きつかれていた。



 とすると、彼は一体何者だ?



 オールフォーワンと同じように超常黎明期を生き、彼に勝利した人物は……。


初祖龍
初祖龍
俺が何者かって?
初祖龍
初祖龍
そうだな……初祖龍としか答えようがないけどね




オールマイト
だろうな……



 彼と雑談して驚き疲れた故に、私はあることを思い出した。


オールマイト
そういえば、私と会った時に取引をしようと言っていたが、あれは何だ?



 そう言えば、子供らしくそうだったや、と思い出していた。


初祖龍
初祖龍
まぁ、本当はこっちが本命なんだよね
愚か者は正直どうでもいいけど



 私にしかできない事とは何か。



 私はすでに力が弱まっていることを彼も知ってるはずだ。



 私には何があると言うのか。


初祖龍
初祖龍
君にお願いしたいことがある



 目の前の彼の雰囲気が変わった。



 先程まで見せていた子供っぽい表情はなくなり、キリッと引き締まった顔になった。



 そんな彼に私は一つの条件を突きつけた。


オールマイト
代わりに君とオールフォーワンの関係を教えてくれないか
初祖龍
初祖龍
いいよ、だってが要求するものはそれ以上の価値だから



 一人称が"僕"になっている。その変化だけで異様さが際立つ。



 私にどんな価値があるのだろうか……。



 彼から出る言葉に、私は身構えていた。


初祖龍
初祖龍
僕に……



 彼は片手を広げ、何かをねだるように言った。



 彼が要求したものは、私の……。























初祖龍
初祖龍
"平和の象徴"をくれない?



 肩書きだった。


初祖龍
初祖龍
そうすれば、誰も傷つける事なくみんなを助けられるよ




 そして、私は……



オールマイト
龍橋くんが…皆が不安を抱えずに生きていられるのなら……








オールマイト
私は肩書きくらいあげるさ



 初祖くんはそんな私に初めて心の底からの微笑みを見せてくれた。



 すぐにその笑顔が消え、キリッとした目つきでこちらをじっと見据える。



初祖龍
初祖龍
なら、今度は僕があげる番だ



 何かを懐かしむような目をして、彼はゆったりと話し始めた。



優
ヤッホー、不定期優です
優
4連続テストが終わり、ようやくゆったりとできる今日この頃
優
次回、龍が超常黎明期にいた時のお話
優
彼は一体何歳なんだろうね?
優
それは誰にも知らない秘密
優
オールフォーワンが思わず舌を巻いた彼の知能とは?
優
次回もお楽しみに!

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