第32話

金魚
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2026/08/29 23:09 更新


〈佐野side〉






夏祭り、欲しくて欲しくて堪らなかった。


優雅に泳ぐ金魚たち。





ヒラヒラと尾びれを翻しながら、
夢見る子どもたちを誘う。







「僕もやりたい」



まんまと惑わされた幼少期。








浅い水の箱に、一面に広がる赤い色。





その中で一匹、群れの中でひと回り小さく、
白い鱗に一際目立つ赤い模様。





捕まえたくて仕方がなかった。






やれどもやれども掬えず、
両親に諦めることを諭され帰った。







夏になると時々思い出す記憶。










あぁ、誠也くんと夏祭り行きたいな。



いちご飴とか好きやろな。



頬を赤くして喜んで、美味しそうに食べるんやろな。





俺の頭の中は常に、あの一面赤で埋め尽くされた水槽のように、誠也くんのことばかり。




年上の余裕に、色気に、まんまと惑わされ夢中になった2年前の夏。







色んな人の腕のなかに居たのにね。






もうどっか泳いで行かんといてね。







「やっと捕まえた」








今はもう、俺の腕のなか。








end.






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