第10話

早朝練習
418
2018/12/25 01:22
田中先輩のおかげで、朝早くに体育館で練習が出来ることになった。

菅原先輩も来てくれて、しょうちゃんの基礎練習に付き合ってくれている。

私は、影山と田中先輩のトスとスパイクの練習でボール出しをしたり、しょうちゃんと菅原先輩の所でしょうちゃんに叱責に近いダメ出しを食らわせたりしている。

『こらしょうちゃん!!何回言えば腕振らんようになると!?腰ば浮かしよって、上達が見えんよ!!』

「怒った時に適当な方言混ぜて怒鳴るのやめてぇぇぇぇ!!なんかこわい!!!」

『だまれ!!先輩付き合わせとるのに無駄口叩いとる場合か!?さっさと構えんか!!』

「ひぃぃぃぃぃぃ…」

見兼ねた菅原先輩がしょうちゃんに助け舟を出した。

「ま、まぁまぁ。日向も頑張ってるわけだし…」

その言葉に喜ぶしょうちゃんを睨み付け、菅原先輩に反論を述べた。

『甘やかさないで下さい!!こいつはすぐ調子に乗るんです!!このくらいは言わないと!!』

「…悪い日向。」

「諦めないでください!?」

なんてやり取りをしていると、後ろから田中先輩の遠慮がちな呼び掛けが聞こえた。

「お取り込み中悪いんですけど、そろそろ羽皓借りていいっすか?」

『あ、はーい!…菅原先輩、甘やかさないで下さいね?』

「…はい。」

『しょうちゃん…わかってるよね?』

「も、もちろんであります!!」

涙目で敬礼したしょうちゃんを見て満足し、小走りでネットが立っているコート中央へと向かった。

『お待たせしました!ポーンって投げれば良いんだよね?』

「あぁ、頼む。」

ここ何日かで、多少、微量、仄かに、薄らと、影山と普通に話すようになった。

もちろんぎこちないし、練習以外では何も話さない。

が、 少なくともあの頃の印象とは変わった。

思ったよりも悪い人では無さそうだ。

大好きなバレーボールに真摯に向き合っているだけなのだ。

もし私がセッターで、一緒に戦う仲間だとしたら、私だって今のしょうちゃんにトスは出さない。

セッターの元にボールを出せないプレイヤーにトスは上がらないのだ。

影山飛雄は天才だ。

もう認める。

めっちゃ凄いもん。

サーブもスパイクもレシーブもブロックもトスも、全てが一級品。

あの日、全部自分ひとりでやりたいって言った意味が分かる気がする。

そして、ただの天才じゃない。

努力が出来る天才だ。

これだけ上手く身体が動けば、それはそれはプレーが楽しいだろう。

元プレイヤーとしては、羨ましい限りだ。

もう同じチームになってしまったわけではあるし、少しくらい歩み寄ってやらんことも無い。

かな?

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