第26話

☔️ 離別の雨 Part 2
439
2023/01/03 10:24





雨夜 梨音side
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パッと赤い鮮血が飛び散る。
それに少し遅れてみぞおちに熱いものを感じた。





受け身を取ろうとしても力の入らない身体は
吹き飛ばされあなたにぶつかった。

___ごめん、大丈夫?
そう言いたかったのに声には出なかった。





辺りは静かであなたの声が
響き渡って木霊こだまする。




(なまえ)
あなた
っリオ、大丈夫?



重いまぶたを開いて “ あなた ” と呼ぶ。
声が出せる事に驚いたけど、
それ以上に驚かされたのはあなたの表情だった。


___なんで無茶したの?



そう問いたあなたの言葉には怒りや
焦りが含まれていた。


こんなに感情を外に出すように
なったのはいつからだろう。

嬉しさもあるが謝る以外に
なす術は無かった。


雨夜 梨音
雨夜 梨音
ごめんね
そう言った後のあなたは辛そうだった。


あなたの気持ちを汲み取ってあげられない事が
もどかしかった。
(なまえ)
あなた
もういいから……ねぇリオ
呼吸で治す事は出来ないの?
雨夜 梨音
雨夜 梨音
……無理、呼吸はそこまで便利なものじゃないからね


もし私が呼吸を使いこなせていたら、
治す事は出来たのだろうか。

あなたに心配を掛けさせないで
いれたのだろうか。


様々な憶測が飛び交うけど
それは私に出来なかった事だと一蹴する。





身体中の体温が地面に吸い込まれるように
冷えて行った。

その時のあなたの手から伝わってくる熱は
一段と熱く感じられた。



雨夜 梨音
雨夜 梨音
言えるうちに言っておこうかな


私に残された時間を精一杯使って、
あなたに残せるものを遺そう。


それが価値あるものになる事を願って。



雨夜 梨音
雨夜 梨音
あなたには私の生家、雨夜家に行ってほしい
(なまえ)
あなた
リオの?
雨夜 梨音
雨夜 梨音
そう。きっとあなたは天の呼吸を使えるようになれる
私が成し得なかった事も……出来る



派生した呼吸ではなくて
ちゃんとした、私と同じ呼吸を使ってほしい。


私がやり遂げられなかった事も、全てを。



雨夜 梨音
雨夜 梨音
家族には身体を大切にって伝えてほしい
嫌だったらしなくて良いからさ、ね?
(なまえ)
あなた
やるよ、必ず

あなたの意志のこもった返答に
笑みが溢れる。


この時間がいつまでも続く事をただ祈るばかりだった。


雨夜 梨音
雨夜 梨音
あの時、あなたと出会えて良かった
ありがとね
(なまえ)
あなた
私こそ、ありがとう
(なまえ)
あなた
私を気に掛けてくれて守ってくれた事、
本当に感謝してる


短い言葉の中にもあなたの気持ちが
十分に伝わって来る。



暖かいものが内側から込み上げて
視界が滲んだ。


___泣かないでよ、リオ



そう言われて初めて
“ 泣いている ” という事に気付いた。



死にたくないな。
もっとあなたと一緒にいたいな。





叶うはずのない希望が溢れ出す。
ポタッポタとあなたの涙が肌を伝った。



泣かないで。
そう言いたいのに声にはならない。


リオ、リオと声を掛けられるうちに
幼かった頃の姿が浮かぶ。


師範、と呼ばれるのも好きだったけど
こっちの方が何倍も良い。



もうあなたは一人でも大丈夫。
あの日、出会った時のあなたとは違う。


きっともう大丈夫。




差し込む日の暖かさと身体中に残るあなたの暖かさの中、
私は目を閉じた。












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