第31話

☔️ 蒼色の雨
469
2023/01/03 10:26





当主
お前……何て事をッッ
(なまえ)
あなた
何度でも言う、リオの事を侮辱しないでください
(なまえ)
あなた
譬え、奥義が使えなかったとしても、
リオは最後まで死人を出さなかった


当主
その結果、自分が死に絶えたのだろう?


当主の声が辺りに響いた。
酒臭い匂いが鼻に入り込む。


むせ返る匂いに、空気に嫌気が差した。




この匂いも、この空気も、
怖気付いて何も言い返せない私も、





____全部、大嫌いだ。








一度くらい他人の前で自分の思う事を
言ってみたい。


恐怖も、嫌悪も、
全てを薙ぎ払って晒し出して。






失う物は何も無い。



リオが居なければ、私はどうなろうが
私の知った事では無い。







_____



___







ずっと、怖かった。







私が何かを言う事で、離れて行ってしまう事が。
存在を失くされ、捨てられる事が。






でも、そんな事をされても怖くない。









欲張るんだ。
ずっと言えなかった事を全て吐き出す。







私に足りなかった物。










___もっと、欲張って良いんだよ?









リオの言葉が頭の中で響く。









私にだって、意地はある。


















(なまえ)
あなた
……いい加減にしろ、クソ当主ッッ






その瞬間、当主の顔には完全なる怒りが現れ、
花音さんが叫んだ。


それがゆっくりと見える。



掴みかかって来た当主ですらもゆっくりと。
それを避けずに受け入れる。



逃げようとなんか思わない。
どうなっても構わない。






脳が揺れるような強い衝撃を感じた後、
私の視界は暗転した。






いっその事、殺してくれれば良かったのに。







そんな呟きも濃い闇の中に吸収され、
消えて行った。














リオに会いたい。
寂しい、悲しい。








リオが居なくなってからは、
心に穴が空いたような感覚がずっと付きまとっていた。








その穴を埋めてほしい。








そんな事を叶えてくれる人は
いるのだろうか。













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