第32話

☔️ 誓いの雨
485
2023/01/03 10:26





雨夜 花音
雨夜 花音
……大丈夫ですか?



薄らと目を開けた先には花音さんが居た。
こちらを覗き込むその目には
心配の色が滲んでいる。


(なまえ)
あなた
……ご迷惑を、お掛けしました


素直に謝罪の言葉が漏れた。
やはり、花音さんとリオは似ている。



雰囲気も、顔も、
どことなく同じ感じがする。



雨夜 花音
雨夜 花音
謝らないでください
雨夜 花音
雨夜 花音
私は、お父様に姉様を悪く言われても
何も言えなかった
雨夜 花音
雨夜 花音
お父様に姉様の事を言い返した時のあなたさんの姿
とてもかっこよかったですよ


そう言った後に花音さんは
私に笑い掛けた。


私は思った事を言っただけなのに。
でも、不快には思わなかった。



得体の知れない感情が私の心を満たす。
リオの死で抜けたモノが私に戻って来たような。





ちゃんと、笑える。
作り物ではない笑顔が、心の底から。






(なまえ)
あなた
ありがとうございます



___ありがとう



その言葉の中には
看病をしてくれていた事に対する物と、


無くしかけていたものを
思い出させてくれた事に対する物が詰まっていた。







_____



___





雨夜 花音
雨夜 花音
私はあなたさんに天の呼吸を継いでもらいたいです
譬え、それがしきたりでも……
雨夜 花音
雨夜 花音
姉様の想いを繋げてほしい
ずっと姉様の側に居たあなたさんならきっとそれが出来る
雨夜 花音
雨夜 花音
天の呼吸を継いでもらえませんか



その言葉が嬉しかった。


今日初めて会ったばかりの私に、
そこまで行ってくれる事が何よりも嬉しい。





迷いは無かった。






畳に手を付き花音さんに向かって
頭を下げる。



(なまえ)
あなた
その申し出、お引き受け致します






その言葉と共に私は一つ決めた。
天の呼吸を継ぐにあたって。



もう、「雨夜」では居られないと。
当主様を怒らせ、リオももう居ない。





でも、リオの事を完全に無くしたくはない。









「天ヶ瀬」
三度目に変えたこの苗字は花音さんと共に考えた。




決意も、後悔も、思い出も、
全てが詰まった苗字だった。










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