第25話

☔️ 離別の雨 Part 1
461
2023/01/03 10:24





童磨が去って行くのを呆然としながら
見送った。


避難が完了していたのか
辺りに人気は無く、静かだった。



今までにあった事が本当に起きていた事だったのか
そう疑ってしまう程に静まり返っている。




(なまえ)
あなた
っリオ、大丈夫?



背中に被さっているリオを
ゆっくり下ろして声を掛ける。


血色が悪く肌の色はくすんでいた。
みぞおちにはっきりと穴が空いていた事だけは
鮮明に記憶された。


雨夜 梨音
雨夜 梨音
……あなた?


(なまえ)
あなた
なんで無茶したの?



「ありがとうと」とか「ごめんね」とか
言えれば良かったのに。


私の口から出たのはリオを
問い詰めるような言葉だった。


雨夜 梨音
雨夜 梨音
ごめんね


謝ってほしくないのに、
無理をしてほしくなかっただけなのに、
どうして言葉を選び間違えてしまうのだろう。


思っている事がそのまま伝わればいいのに。


(なまえ)
あなた
もう良いから……ねぇリオ
呼吸で治す事は出来ないの?


雨夜 梨音
雨夜 梨音
……無理、そこまで呼吸は便利なものじゃないからね




目の前が真っ暗になった。

治せないって事は
リオは死んでしまうって事に値するから。


その出血量じゃ無理だって。
死んじゃうって。



リオに触れている部分が冷たくなっていく。
私がいくら手を強く握っても
冷えて行いくばかりだった。




雨夜 梨音
雨夜 梨音
言えるうちに言っておこうかな


何も言わずに聞いておくことにした。
私が話してもきっとリオを傷付けてしまう。


だからリオの話を聞こうって
そう思えた。


雨夜 梨音
雨夜 梨音
あなたには私の生家、雨夜家に行ってほしい
(なまえ)
あなた
リオの?
雨夜 梨音
雨夜 梨音
そう。きっとあなたは天の呼吸を使えるようになれる
私が成し得なかった事も……出来る



成し得なかった事?
尋ねようとしても話は次に移ってしまった。


雨夜 梨音
雨夜 梨音
家族には身体を大切にって伝えてほしい
嫌だったらしなくて良いからさ、ね?
(なまえ)
あなた
やるよ、必ず


指先まで力を込めてそう伝える。
笑えているかな、泣いていないかな。


一生懸命口角を上げて返した。

雨夜 梨音
雨夜 梨音
あの時、あなたと出会えて良かった
ありがとね
(なまえ)
あなた
私こそ、ありがとう


今度はちゃんと笑えた気がした。
精一杯の「ありがとう」を伝えられた。


(なまえ)
あなた
私を気に掛けてくれて
守ってくれた事、本当に感謝してる



___うん




そう言ったリオの瞳には薄く
透明なもので覆われていた。




___泣かないでよ、リオ



そう笑みを崩さないまま話し掛ける。
リオの体温が僅かにでも感じられるその時まで













___ずっと抱きしめていた。















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作者
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