第28話

☔️ 白妙の雨
417
2023/01/03 10:24





リオがいなくなってからは毎日が
虚しく、簡素に過ぎて行った。









ポッカリと心に穴が開いてしまったように。
どんな刺激も私の中では響かず、
通り過ぎる。





“ 上弦に遭遇した隊士 ” として
お館様の屋敷に呼び出された。



柱もいた。

どんな能力を持っていたのか、とか
どれ程の力量だったのか、とか
聞かれた所までは覚えている。


その後はあやふやにしか覚えていない。



質問に答えようとしたら、
目の前が立って居られない程に揺れて、
胃から熱いものが込み上げてきて___。









気付いたら蝶屋敷にいた。
蟲柱様が言うに
私は過呼吸を起こした、との事だった。


頭痛と吐き気のする中で聞いていた。
___何か相談事があったらいつでもどうぞ



そう言った蟲柱様の羽織りを掴んだ。






ーーーーー




どうしても、忘れられない。
“ あの日 ” の事が。







辺りに飛び散った血も。
童磨の嘲笑う声も。
冷たく土色になったリオも。








脳裏に張り付いて、離れない。



涙は出なかった。
ただただ、答えを探していた。






___私はどうすれば良いのですか






そう尋ねた。
ずっと求め続けた “ 正解 ” を求めて。





何をすれば良いのか分からない。



鬼を斬れば良いの?
鍛錬を積めば良いの?





蟲柱様の言う事なら “ 正しい ” そう思った。







胡蝶 しのぶ
胡蝶 しのぶ
辛い事があったとしても、
生きていくしかないんです
胡蝶 しのぶ
胡蝶 しのぶ
確かに “ 幸せ ” というものは脆くて儚い
だからこそ、それを大切にするのではないのですか?
胡蝶 しのぶ
胡蝶 しのぶ
梨音さんが望んでいた事は何ですか?





…リオが望んでいた事。


___私の生家に行ってほしい





そう望んでいた。





(なまえ)
あなた
ありがとう、ございます





お礼を言って蝶屋敷を出る。
上空を飛ぶ鎹鴉を追いながら、リオの生家へと向かった。












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