リオがいなくなってからは毎日が
虚しく、簡素に過ぎて行った。
ポッカリと心に穴が開いてしまったように。
どんな刺激も私の中では響かず、
通り過ぎる。
“ 上弦に遭遇した隊士 ” として
お館様の屋敷に呼び出された。
柱もいた。
どんな能力を持っていたのか、とか
どれ程の力量だったのか、とか
聞かれた所までは覚えている。
その後はあやふやにしか覚えていない。
質問に答えようとしたら、
目の前が立って居られない程に揺れて、
胃から熱いものが込み上げてきて___。
気付いたら蝶屋敷にいた。
蟲柱様が言うに
私は過呼吸を起こした、との事だった。
頭痛と吐き気のする中で聞いていた。
___何か相談事があったらいつでもどうぞ
そう言った蟲柱様の羽織りを掴んだ。
ーーーーー
どうしても、忘れられない。
“ あの日 ” の事が。
辺りに飛び散った血も。
童磨の嘲笑う声も。
冷たく土色になったリオも。
脳裏に張り付いて、離れない。
涙は出なかった。
ただただ、答えを探していた。
___私はどうすれば良いのですか
そう尋ねた。
ずっと求め続けた “ 正解 ” を求めて。
何をすれば良いのか分からない。
鬼を斬れば良いの?
鍛錬を積めば良いの?
蟲柱様の言う事なら “ 正しい ” そう思った。
…リオが望んでいた事。
___私の生家に行ってほしい
そう望んでいた。
お礼を言って蝶屋敷を出る。
上空を飛ぶ鎹鴉を追いながら、リオの生家へと向かった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。