博麗霊夢。
幻想郷の素敵な巫女と呼ばれた彼女は、
月へ行ってしまった。
ならば、その娘は果たして【巫女】と呼べるのだろうか。
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永琳の持っている おぼん を見て、私はそう問いかける。
しばらく訪れる沈黙。
来月は私の誕生日。
誕生日は好きな願い事を1つ叶えてもらう約束。
つまらない病室で数少ない楽しいイベントの1つ。
でも、今年は…
【幻想郷に降りる事は駄目よ】
静かに、落ち着いて、冷たく、でも少し優しく。
突きつけられた言葉は重く、辛い。
けれど、私はそれでも
無理して笑って、
笑えてるかも分からなくて、
それでも笑うしかなくて、
そして、表情が崩れないように、
見られないように、
顔を伏せた。
あと1ヶ月で
私の誕生日だ。
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私は博麗の巫女の娘。
まだ巫女じゃないわ。
ため息をつく、その直後
金色の短い髪を揺らしながら手を振り、こちらへ走って来る少女。
頭の右上にあるリボンは少女の走りに合わせてフワフワと揺れ、スカートは軽く羽ばたくように風を切る。
トフッと私を抱きしめる少女は私の服に顔を埋める。
母の誕生日の1ヶ月を切った。
誕生日プレゼントは何にしようか
決まらない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。