小さい頃から、私のそばには絶対にピアノがあった。
そのピアノが奏だす音は、姉の創り出す正確で音の狂いがないピアノであったり、母親が私に教えてくれた、拙いながらも優しいピアノであったり、様々な音を奏でていた。
しかし、それはオンボロのアップライトピアノで、とても弾きやすいピアノだとは言えなかったがそれでも私達家族にとってはとても大切なものの一部であった。
そんな音楽がある生活を送っていた私は、幼稚園生の時、ピアノを習い始めることになった。
近くのピアノ教室に通いはじめて、本格的なレッスンを始められると知ったときの嬉しさは今でも忘れられない思い出のひとつである。
初めて弾けた曲は、ロンドンの鐘という曲だ。今おもば簡単な曲なのに、どうしてこんな曲でつっかえたのか今の私にはわからない。だけど、私はこの曲を弾くためにすっごい苦労をした覚えがある。でも、今の私にとってはもういい思い出だ。
はじめての曲を弾けるようになり、そこからどんどん色々な曲を弾けるようになった。年を重ね、練習を重ねるごとに、私の音はどんどん深くなっていった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!