それから、上履きを隠されたり、
教科書を隠されたり、
嫌がらせは何日も続いた。
クラスの女子のほとんどが
口を聞いてくれない中、
どうやら、麻衣子がみんなを
仕切っていることがわかった。
なっちゃんが私に話しかけようと
すると、麻衣子が大声でなっちゃんを
自分の方に読んだりする。
体育の時間、私が走る番になると、
麻衣子のグループの子たちが
私を指さしてゲラゲラ笑い声を
上げたりする。
廊下で私とすれ違う時には、
今日もキモイんですけどー
学校来ないでほしんですけどー
って大声をあげる。
でも、いったいどーしてこんな目に
あうんだろう。
理由を考えてみたけれど、
どうしてもおもい当たらない
私は勇気を振り絞って、
ある日の放課後、麻衣子を呼び出した。
中庭の自動販売機の前で待っていると、
麻衣子があらわれた。
麻衣子は両手をブレザーのポケットに
つっこんで、いかにもめんどうくさそうな
態度で私の前に立つ
麻衣子は話出そうとした
私を即座に遮った。
そして私をにらみつけるように
しながらゆっくりと歩いていく。
麻衣子は少し離れたところで
立ち止まって、満面の
笑みを浮かべながら
私を見た。
麻衣子は頭上を指さした。
つられて上を見ると、窓から
バケツを持った手があらわれて
バシャーン!
私は頭から大量の水をかけられた。
水浸しの私を見て、麻衣子が
声を上げて笑いだした。
窓からは、麻衣子のグループの女子が
やっぱり楽しそうに笑っている。
私はうつむいてこぶしをぎゅっと
握りながら言った。
麻衣子が近づいてきた。
その顔は真顔だ。
もう、まったく笑っていない
どうしてこんなことを
されなくちゃいけないのか分からない
私は耐えられなくなって声を上げた
麻衣子もきつい口調で言い返してくる
そして、私の髪をつかみ
頭をゆすった。
髪の毛からしたたりおちてくる
水が、あちこちにはねる。
後頭部が背後の自動販売機に
うちつけられる。
麻衣子は手をはなし、
私から遠ざかっていく。
そして、数歩行ったところで
立ち止まって、振り返った。
麻衣子はニヤリと笑い、去っていった。
鳥肌がたつような感覚がして
私はその場に膝から崩れおちた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。