中から鈴木の声が聞こえてきて
私は足を止めた。
パソコン室のドアは、開けっ放しに
なっている。
気になる気持ちをおさえきれず、
ドアに近づいてそっと中身を見ると、
鈴木と麻衣子が向かい合っていた
麻衣子は可愛らしい仕草で
首をかしげている。
鈴木は、今まで見た事のないような
表情で麻衣子の前に立ちはだかっていた
麻衣子はおびえたように首を振った
昨日、私に見せた態度とは全く違う
それにしても鈴木って
いつもふざけているようでいて
最近教室内での様子を、
ちゃんと見ていてくれたんだ
私は2人に見つからないように
ドアの影にさっと隠れた。
麻衣子は訴えるような口調で言った
鈴木が張り上げた声が
廊下まで響いてきた
鈴木が私のことを
すき?
私はリュックの肩ひもを
両手でぎゅっと握った。
鈴木が麻衣子の目をじっと見ながら
真剣な口調で言った。
いつものキャラと全然違うせいか
余計に迫力がある。
麻衣子がパソコン室から飛び出してきた。
ドアの影にいた私に気づいて、
一瞬にらみつけていったけど、
すぐに走りさった。
麻衣子は目を真っ赤にして
泣いていた
あんなにひどい嫌がらせをされたけど
この子はずっと、鈴木のこと
好きだったんだな。
そう思うと、胸がちくりと痛んだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。