なにか分からないモンスターのでっかい人形を背負っている。
さっきゲーセンで自分で取ったくせに。
そう、
あいつが私を連れて行ったせいで日誌かけてないし、
片付けのチェックも心配。
だから体育館に寄った。
私は独り言を発しながら作業を進める。
すると急に、背中があったかくなって。
背後に瀬口がいて、
そいつに抱きつかれていることが分かった。
何かが落ちた音がした。
ああ、
私が持ってた日誌か。
なんで瀬口はこんなにも私をからかいたがるのだろう。
そう言って私をより強く包む。
.
自分の心臓の動きが早まってるのを感じる。
今まで、瀬口の生意気な面ばっかり見てきて。
『好き』とか言ってきて。
ふざけてると思ってたけど、
あいつが本気だってことを感じることが最近多くて。
あいつのせいで、気が楽になるとこが多くて。
あいつに心が動くことがあって。
でも、とりあえず、私はいつでも、冷静に。
冷静に。
冷静に。
ああ、
落ち着いてないのは、私だったか…
また振り回された気がする。
でも、ちゃんと考えなきゃだよね。、
関わりたくないって逃げてきたけど。
でもとりあえず今は、
だってこの後一緒に帰ってなに話せばいいの?!
落ち着け、私。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!