第16話

国際郵便
172
2021/06/25 12:00

私は仕事を終えて家に帰ると、すぐに晩御飯の用意をする。

いつも通りの日常にある変化がもたらされた。

吉川 航平
吉川 航平
ただいまー。雪穂に国際郵便が届いてたよ?
斎藤 雪穂
斎藤 雪穂
国際郵便?なんだろ

封筒をよく見てみると、国際郵便なだけではなく、一度実家に届いているようだ。

私は封筒の上部をハサミで切る。



斎藤雪穂 様

お元気ですか?峰川結弦の母、佐知子です。

結弦は脳の病気で術後も元の生活には戻れませんでした。
そばに私や夫、誰か支えてくれる人がいないと生活ができない、そんな生活を送っていました。
それでも、何となくはあなたのこと、雪穂さんとの思い出も記憶にあるようでした。
何度も雪穂という女の子が夢に出てくるのだと、一生懸命私たちに伝えてくれました。
そんな結弦の姿はどこか嬉しそうで、私達もとても喜んでいました。

術後の回復も順調……とは言えませんでしたが、私達家族の時間を有意義にさせてもらいました。

あの時にアメリカへ行く選択をしたのは間違いではなかったと思っています。

どうして今、この手紙をあなたに送ったのか。

一つお知らせすべきことがあるからです。

結弦は5月7日にこの世を旅立ちました。

このことはどうしても雪穂さんに伝えるべきだと思いまして、勝手ながらお手紙を送らせていただきました。

雪穂さんにはきっと新しいパートナーがいることでしょう。
ですが、私達はあなたが結弦のことを忘れないでいてくれることを信じています。

どうか、お幸せに。
峰川 佐知子

斎藤 雪穂
斎藤 雪穂
結弦……くん

手紙を読み終えた私の顔は涙で濡れた。

もう彼はこの世に居ないんだ。

5月7日……確か、私があの夢を見た日。


これも何かの運命だろうか。


でも、今の私には新たなパートナーがいる。

結弦くんのことはもちろん忘れない。

けれど、今目の前にいるこの人を大切にする。

斎藤 雪穂
斎藤 雪穂
航平……話があるの
吉川 航平
吉川 航平
うん


きちんと話さなければならない。

この先、共に生きていきたいと思う彼に。

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