「────なぁ、雪穂」
遠くから何度も私を呼ぶ声が聞こえる。
その声は次第に近くなる。
私たちは付き合っているようだ。
でも、結弦はあの時のまま。
あの制服にカバン、マフラー。
結弦の姿は段々と薄くなり、私が彼の手を掴もうとしてもすり抜けてしまう。
私はもう目の前に居ない結弦にそう言った。
* * *
でも、夢だったとしても結弦くんに会えたのだから。
ちゃんと感謝の気持ちを伝えられたのだから。
もう思い残すことはない。
あとは……私が幸せに生きること。
周りの人や困っている人を助けて
社会のために働いて
子供を育てて
自分が笑う。
それだけを全うするんだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。