第20話

私の使命
162
2021/06/26 12:00

「────なぁ、雪穂」


遠くから何度も私を呼ぶ声が聞こえる。

その声は次第に近くなる。
斎藤 雪穂
斎藤 雪穂
結弦
峰川 結弦
峰川 結弦
お、じゃあ行こうか


私たちは付き合っているようだ。

でも、結弦はあの時のまま。

あの制服にカバン、マフラー。

峰川 結弦
峰川 結弦
俺はね、雪穂が幸せなのが一番嬉しい
斎藤 雪穂
斎藤 雪穂
え?
峰川 結弦
峰川 結弦
雪穂が笑ってくれればそれでいい
斎藤 雪穂
斎藤 雪穂
待って、待って結弦!


結弦の姿は段々と薄くなり、私が彼の手を掴もうとしてもすり抜けてしまう。

斎藤 雪穂
斎藤 雪穂
ゆ、結弦……ありがとう。
大好き……だったよ。


私はもう目の前に居ない結弦にそう言った。



* * *



斎藤 雪穂
斎藤 雪穂
はっ!夢……か


でも、夢だったとしても結弦くんに会えたのだから。

ちゃんと感謝の気持ちを伝えられたのだから。


もう思い残すことはない。


あとは……私が幸せに生きること。


周りの人や困っている人を助けて

社会のために働いて

子供を育てて


自分が笑う。


それだけを全うするんだ。

プリ小説オーディオドラマ