いつも通りの支度をして、いつもの電車とバスに乗る。
結弦くんが隣にいないことで、最近の徒歩通学はほとんどない。
私に声をかけてきたのは、一目見るだけでもお嬢様という雰囲気が溢れている百合さん。
学年の中でも社長令嬢ということで有名だ。
彼女に仲のいい人といえば二人くらいで、あまり目立ちたがり屋なわけでもない。
だけど、彼女の美貌とオーラにみんな二度見してしまうほど。
そんな百合さんに声をかけてもらえるなんて。
どうしよう。
ここは正直に言うべきなのか?
でも、結弦くんの目が覚めた時、人に知られたくなかったとしたら?
どう言うのが今のこの場に適しているのか分からない。
そうだ。
百合さんはそう言って私の元を去った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。