ガラガラ……と重い扉を開く。
私が目の前にした光景は、相変わらずだった。
もしかしたら結弦くんが起きているかもしれない……なんて考えてしまっていた分、落胆してしまう。
今日はそんな時じゃないのにな。
結弦くんのお母さんはにっこりと微笑んで病室を出た。
私はゆっくりと結弦くんのベッドの傍らに歩み寄る。
彼の寝顔は、今回の事故まで見たことがなかった。けれど、予想通り美しい。
私は彼の手を取って握った。
頬を伝う涙を隠して。
きっと、結弦くんにも、彼のご両親にも謝っても謝りきれない。
もっと早くメガネを返していてもらっていたら?
あの時、本気でメガネを返してと言っていたら……
もうどうしようも無い後悔と、どこにもぶつけようのない怒りが込み上げる。
彼の顔が見たい。もっとずっと。
でも、最後だから。
私はメガネを外して隣のテーブルに置いた。
最後は結弦くんの好きな私でいたいから。
冗談まじりにそう言うけれど、彼は動かない。
分かってはいるけど、まだ心のどこかで期待してしまっている。
そうして私は自分の唇を彼の頬にあてた。
もしあなたが私のことを嫌いになったとしても、私はあなたのことがずっと大好き。
何があってもこの気持ちは忘れないし、薄れることもない。
永遠に。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。