第5話

vol.2 夜
5,142
2022/02/12 02:42
寺戯 長詠
寺戯 長詠
にしても……何と言うか、ボロボロですね。ここ
グリム
グリム
オンボロ寮だからな
寺戯 長詠
寺戯 長詠
うわ、ネーミングまんま
グリム
グリム
それより、オマエ知人の屋敷から来たって言ってたけど、知人の屋敷って何処にあんだ?まさか、その知人が魔法士で、鏡に何らかの魔法を掛けてたのか?
寺戯 長詠
寺戯 長詠
貴方の言動からして、こちらでは魔法が普通に存在しているみたいですが、僕は魔法の無い世界から来たんですよ。
何故この場所に来てしまったかは分からないけどね
僕がそう話すと、二人は「え……」と目を見開き、互いの顔を見てから再び僕の方を向いた。
すると、猫が「お、オマエもなのか!?」と前のめりになって言うので、僕以外にも似た状況の人が居るのだと察する。多分、様子からして隣にいる少年だろう。
ユウ 監督生(仮姿)
ユウ 監督生(仮姿)
じ、実は僕も突然こっちの世界、“ツイステッドワンダーランド”にやって来てしまった魔力を持たない人間なんです!今は帰る方法を探す為に、自分が最初に目を覚ました魔法士養成学校ナイトレイブンカレッジに特別通わせてもらっているんですけど……もう大分月日が経ってるんですよね
グリム
グリム
まさか他にも来るとは思って無かったけどな
寺戯 長詠
寺戯 長詠
(彼の発言だけでそれなりの情報は得たな。此処はツイステッドワンダーランドと言う世界なのか。魔法士養成学校は名前の通り、魔法士の卵達が通う魔法学校だろうか。でも、この世界へ彼が来た理由と僕が来た理由が同じとは限らない。ましてや、僕と同じ世界から来たとも限らない)
鏡の中の男が何の為にわざわざこの世界へ僕を連れて来たのか。何故魔法の存在する世界か。
否、これは本当に男の異能か?
幻を見せたり、空間を作るならまだしも、異世界へ飛ばすとは……。
細かい疑問は幾らか出てくるが、それはおいおい解決させよう。
寺戯 長詠
寺戯 長詠
(今の所、僕が出てきた鏡に変化は無いが……何処かで見られている可能性もある。暫く様子を見ながら動くか)
グリム
グリム
なぁ、この事一応学園長にも伝えた方が良いか?ユウ
ユウ 監督生(仮姿)
ユウ 監督生(仮姿)
そうだね……。きっと、僕と同じで帰る方法探す事になると思うし。あ、僕はユウと言います。この子はモンスターのグリムです
寺戯 長詠
寺戯 長詠
僕は寺戯長詠です。
宜しくお願いします
ユウ 監督生(仮姿)
ユウ 監督生(仮姿)
寺戯さんですね。今夜はもう遅いのでオンボロですが、良かったら泊まっていって下さい。洋服もお貸ししますので!
自分と同じで、他の世界から魔力を持たない仲間が来たのが嬉しかったのか、少年は随分と生き生きしている。しかし、こんなあっさり受け入れられて良いのだろうか。逆に不安。
寺戯 長詠
寺戯 長詠
(今日中に帰れそうも無いし、お言葉に甘えるか)
全く警戒していない訳では無いが、彼等は突然現れた僕を快くもてなしてくれた。猫に関しては仕方ないな……といった流れでの了承だったが。
グリム
グリム
オマエ等二人が魔法を使えない中、オレ様だけが魔法を使えるんだ!オンボロ寮にいる間はオレ様が親分でオマエ等が子分だからな!
初対面とは思えない傍若無人ぶりに、向いてるベクトルは違うものの武装探偵社の江戸川乱歩さんが頭を過ぎった。
寺戯 長詠
寺戯 長詠
魔法が使えた方が偉い、などの決まりでも……?
小声で少年に尋ねると、少年は「んー。そういう訳ではありませんが、ナイトレイブンカレッジだと魔力を持たないのを理由に何か言われる可能性はありますかね」と苦笑いする。
寺戯 長詠
寺戯 長詠
なるほど?
グリム
グリム
ユウ、オレ様腹減ったんだゾ〜
ユウ 監督生(仮姿)
ユウ 監督生(仮姿)
さっき夕食食べたばっかなのに……
仕方ないなぁ。
あ、寺戯さんも食べますか?
寺戯 長詠
寺戯 長詠
おや?良いのかい?
ユウ 監督生(仮姿)
ユウ 監督生(仮姿)
はい。材料ならありますから
寺戯 長詠
寺戯 長詠
では、有難く頂こうかな
少年……ユウ君は早速台所に向かい、僕は椅子に座って部屋を静かに見回す。
今の所、僕達以外の気配はない。
鏡も、先程と変わらず部屋の中を映すだけ。
暫くするとユウ君が咖喱カレーを二人分運んで来る。
寺戯 長詠
寺戯 長詠
(カレーか……何だか懐かしいな。近頃はあまり食べてなかったから)
寺戯 長詠
寺戯 長詠
美味しそうですね
ユウ 監督生(仮姿)
ユウ 監督生(仮姿)
僕が作ったんですけど、口に合うかどうかは……
グリム
グリム
ユウの作ったカレーは美味いんだゾ!
いっただきまーす!
グリムはカレーをガツガツと口の中に頬張り、ユウ君が「ゆっくり食べなよ……。お行儀悪い」と呆れながら注意する。
寺戯 長詠
寺戯 長詠
じゃあ僕も頂こうかかな。いただきます
スプーンでルーとご飯をすくい、ゆっくりと口に運ぶ。不安気にユウ君が僕に視線を向けているのに気付き、「うん。美味しいです」と感想を述べた。
寺戯 長詠
寺戯 長詠
中辛?
ユウ 監督生(仮姿)
ユウ 監督生(仮姿)
はい。甘すぎても嫌だってグリムが文句を言うのでいつも中辛なんです
寺戯 長詠
寺戯 長詠
そう……
カレーを見て思い出すのは嘗ての友人。
何処かほっこりとした気持ちになり、ついさっきまで人を殺めていたのが嘘のようだ。
カレーを食べ終わったあとは就寝する為にやるべき事を済ませ、別の部屋へと案内される。
明日は学園長に説明も兼ねて僕を紹介したいということなので、朝早く起きて彼等と学校に行かねばならない。
寺戯 長詠
寺戯 長詠
(銃とナイフは流石に持っていけないかな……)
何処か隠せそうな場所はないかと思い、部屋のクローゼットの天井裏を異能で少し剥がして武器を隠した。
寺戯 長詠
寺戯 長詠
(さて、寝るか)

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