第19話

vol.16 増
3,144
2022/07/05 04:59
あの後、オンボロ寮に戻ったはいいが……僕や少年がいない間に新たな展開が起きていた。
寺戯 長詠
寺戯 長詠
はぁ……マジか
ユウ 監督生(仮姿)
ユウ 監督生(仮姿)
こ、これは……
グリム
グリム
人が、増えてるんだゾ!?
そう。これから他の皆も来るだろうと予想はしていたが、案の定人が増えていたのだ。
芥川龍之介
芥川龍之介
ゲホッ……。
寺戯さん、御無事で何よりです。
事情は中也さんから伺って居ます
樋口一葉
樋口一葉
実を言うと、私達も前回居た屋敷とは別の場所にあった鏡に吸い込まれてしまい……
中原中也
中原中也
おい、止めとけ二人共。
部外者がいる前でこれ以上は言えねぇ
自分の服を取り戻し、先に帰っていたらしい何時もの姿の中也が注意すると、二人は口を閉じ、三人の視線が少年とグリムの方に向けられる。
グリム
グリム
こいつらもお前の仲間か?
ユウ 監督生(仮姿)
ユウ 監督生(仮姿)
寺戯さん達は一体……
寺戯 長詠
寺戯 長詠
悪いね。少し席を外してくれないか?
此処からは大人の時間だ。
僕達の事は何れ分かると思うから、今は何も聞かないで欲しい
ユウ 監督生(仮姿)
ユウ 監督生(仮姿)
は、はい
少年はグリムを連れて部屋から出て行き、僕は念の為鍵をかける。そして、中也達との話を再開する。
寺戯 長詠
寺戯 長詠
さて……話を続けよう
中原中也
中原中也
そうだな。俺がこの建物に戻ってきたら此奴らが居たんだ
芥川龍之介
芥川龍之介
やつがれ達は消えた中也さんと寺戯さんを見つけ出す為、御二人が吸い込まれたという鏡を回収しに行っていました
樋口一葉
樋口一葉
しかし、鏡のある屋敷に向かう最中……街にあるショーウィンドウの中に吸い込まれたんです
今までは屋敷の鏡だけを入口にしていた。
だが、次は誰もが街を歩けば目に入るショーウィンドウ……敵は本格的に四組織を此方へと閉じ込める気らしい。
中原中也
中原中也
鏡の次はショーウィンドウだァ?
一体何が起きてやがる……
寺戯 長詠
寺戯 長詠
其れ何だけどね中也……
僕は学校の廊下で起きた出来事を話した。
勿論、敵組織が行おうとしている戦争ゲームのことも。
中原中也
中原中也
はぁ!?何だそりゃあ
芥川龍之介
芥川龍之介
我々ポートマフィアだけでは飽き足らず、他組織をも敵に回すなど……愚かな
寺戯 長詠
寺戯 長詠
生徒が一人死んだら元の世界に戻れない。けれど、生徒達は人質にも成り得る。彼等には悪いが、巻き添えをくらうかもしれない。否、もう既にくらってる
樋口一葉
樋口一葉
本当に四組織に対して挑みに来ている訳ですか。中々度胸のある……
どんな馬鹿な犯罪組織でも、無知でない限り僕の予想する異能組織に下手に喧嘩をふっかけ、挑もうとする者は早々いないだろう。其れも、一組織だけでなく、四組織まとめてだから尚更だ。
寺戯 長詠
寺戯 長詠
(勝つ見込みがあるから挑んでいるならば、その勝つ方法とは何か……)
芥川龍之介
芥川龍之介
生徒を守りながらの戦……面倒だ
寺戯 長詠
寺戯 長詠
其れはそうなんだけどねぇ〜。 
おまけに、ナイトレイブンカレッジの生徒は話をして一筋縄ではいかなそうな癖の多い生徒も居る。と言うか、大半はプライドが高く、協調性の無い問題児とのことだ。
中には聞き分けの良さそうな子も居るようだけど、其れはあくまで少数
樋口一葉
樋口一葉
不良校か何かで……?
寺戯 長詠
寺戯 長詠
一応名門らしいよ。仮に生徒への忠告をし、彼等が勝手な行動をして巻き添えになれば……僕達“異能力者”のせいにする者もいるだろう。“俺達は関係ない。
やるならお前達異能力者同士でやりあえばいいのに”とか“問題事を持ってきたのはお前等だろ。何でお前達の為に俺達が協力しないといけない”とか……ね?
中原中也
中原中也
んな事言われたとしても、こっちだってやりたくてやるわけじゃねぇっつーの。ったく……餓鬼らしい文句じゃねぇか
芥川龍之介
芥川龍之介
そう言う輩は斬り刻め良い。
人虎との“六ヶ月は人を殺めない”と言う約束は果たしたからな。
※ここでは六ヶ月過ぎたという事でお願いします。
寺戯 長詠
寺戯 長詠
だから、殺したら帰れないんだって。取り敢えず、問題が起きる前に学園長にだけはきちんとお話をさせて頂こうか。
僕達が学校内を自由に動ける為にも、ね。これも生徒の為だ
中原中也
中原中也
うそくせっ
寺戯 長詠
寺戯 長詠
君達も、暫くは自分の正体を隠す様に。
勿論、生徒に対する異能力も禁止だ。喧嘩を吹っかけられても無視か、問題にならない程度で黙らせてやりなさい
中原中也
中原中也
やり返しはするんだな
大体話がまとまった所で日も沈み、生徒が帰っただろう夜、少年に適当に話をつけて僕達は学園長に“挨拶”しに行くことにした。

プリ小説オーディオドラマ