じゃあどうしたら良かったの?
なんでなんにも言わないの?
突然告げられた別れに脳の処理が追いつかず沢山の質問を彼に投げつけた。
しかし彼は窓の前に突っ立ったまま。
少し俯く姿さえ見せた。
tn わかってあげれなくてごめん。でも、最後くらい…
最後くらい、ちゃんとしたかったよ。
こんな終わり方嫌だったよ。
まだ、さっきまで彼と体を重ねてたのに。
もう触れることさえできないの。
正直受け入れることができなくて涙を流すこともできなかった。
なんで泣いてないのなんて疑問を抱いたような彼の表情は寂しそうで安心してしまった。
hj まあまあ楽しかったね。じゃあね。
良くも悪くも彼の暖かい声は冷たくなった俺の心を癒してくれた。
何も持たずに俺の部屋を出ていった。
鍵も指輪も置いてった。
そっか、もう彼にとってはただのガラクタでしかないんだ。
彼はきっともう俺が居なくても寂しくない。
俺が寂しさを埋めなくてもいいくらい彼は強くなったんだ。
良かった。
なんて綺麗な言葉を吐いて。
まだ彼の温もりが残る布団に入る。
1人で眠ってるのに、2人の跡が残っている。
なんだ、まだ近くにいるじゃん。
俺がいないとちゃんと寂しいじゃん。
唇をふるわせて涙を流した。
ねぇ、もしもあの日に戻れたら…
ちゃんとわかってあげるから。
最愛の人が離れていってしまったいま。
さっきの別れた時の悲しみや一緒にいた時の疎ましさが美しく見えてしまう。
夢だってそうだった。
人は失ったものや、遠く離れたものが美しく見えるもの。
そんな哀れな生きもの。
8月31日。
彼と過した3年間は美しく化けていった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。